「アルモニカ・ディアボリカ」
18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、正体不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には“ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ”と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。
じわじわ本の感想がたまってる・・・!
前作「開かせていただき光栄です」から5年後のお話です。消化不良だと感じていた、エドとナイジェル(主にナイジェル)の過去を絡めた話で、前作を補完するだけでなく、1つの物語として楽しめる本でした。改めて皆川さんスゴイな!と思いました。最初からここまで折り込みずみで1作目を書かれたのでしょうか・・・?
採石場の坑道で見つかった死体に記されたメッセージは、ナイジェルからエドへのメッセージではないか?と言う推測のもと、その街を訪れたアルたち+ダニエル先生。しかし、そこで彼らはナイジェルの死体と対面することになる。一体、彼らはダニエルのもとを去ったあと、どのように過ごしていたのか。ナイジェルと共にいたのはアボットなのか。
一方で、ネイサンが出会った女性の恋人の行方を捜すうち、ある精神病患者を収容する施設が浮上する。そこは、かつてナイジェルが生まれ育ったところだった。
ナイジェルの死、という予想外の展開から始まった物語。正直、アボットのことは忘れていました・・・。ナイジェルの誘惑にはまってしまったアボットは、ナイジェルとともに過ごしていたようですね。アボットに好意を寄せていたアン助手は、ショックだったでしょうね。
バートンズの面々も、ダニエル先生も、2人のことを忘れることはできなくて、やっぱりすこし元気がない様子。ナイジェルとは生きて再会できなかったけれど、エドとは再会を果たします。もう罪は償ったのだから、帰ってこいと説得するも、1人でナイジェルの死の真相を解き明かそうとするエド。エドはストイックだからな・・・と納得しつつも、私は仲間のもとに帰って欲しかったなと思います。ナイジェルの手記は、衝撃的な幼少期の体験から始まり、エドへの思いも綴られていて、少し屈折したナイジェルの内面が垣間見えるようでした。エドのこと、好きだったんだねえ・・・。結局、エドにまたしてやられたな!っていう検事さんの気持ちが良くわかりました。もし仮に3度目があったとしても、さすがの検事さんも信じないでしょうね・・・。笑。
楽器の方のお話は、飲み込みにくいところもありましたが、まあそこは雰囲気で・・・。引き裂かれた2人がかわいそうでした。でも、ここは無事に添い遂げられそうで良かったです。これも、エドのおかげなんだけど・・・、エド、最後は志願して戦争に行っちゃうし!最後までびっくりさせられました。彼の罪は最後まで深いところにあり続け、彼自身の中から消えることも薄れることもないのだなと思いました。
検事の苦悩も、この時代ならではで、不正が横行している中で公平さを保ち続けることも困難だと思います。これもストイックじゃなきゃできないよなあ。っていうか、どれだけ意地汚いんだ、みんな。
もとのバートンズには戻れなくても、無事にエドたちが帰ってくるといいなー。
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