忍者ブログ
読書の記録です。

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

東野圭吾/角川書店

あらゆる悩みの相談に乗る、不思議な雑貨店。しかしその正体は・・・。物語が完結するとき、人知を超えた真実が明らかになる。すべての人に捧げる、心ふるわす物語。

連作短編集です。ナミヤ雑貨店を舞台に30年前と現在がつながる。
家族のカタチについての話は、身につまされるものも多く、改めて東野さんは、家族の話を書くのがお上手だなと思いました。
「回答は牛乳箱に」始まりは現在。3人の若者は空き巣犯で、警察から逃れるために廃屋に逃げ込む。すると、牛乳箱に何かが落ちる音が聞こえる。そこには、悩み相談の手紙があった。残された当時の週刊誌などから、どうやらこの廃屋は、一時期ブームになった悩み相談を受ける雑貨店「ナミヤ雑貨店」であることが判明する。悩み相談のやり取りをするうち、相談者は現代ではなく30年前の人物ではないか・・・ということに気付いた3人。夜明けまでここにとどまって、成り行きを見守ることにする。廃屋の中と、過去の時間の流れは違うとかSFの要素もありつつ。物語のプロローグのような感じです。「恋人と○○とどっちをとったらいいでしょうか~」なんて相談は、私にとっては腹立たしくて仕方ありません。(うらやましいから)あのさあ、どっちが大事かなんて、そんなの自分で決めろよ!
「夜更けにハーモニカを」ここから視点が変わります。魚屋の長男である主人公は、家業を継がずに、大学を中退し、東京でミュージシャンを目指す青年。しかし、一向に芽が出ず、実家からも足が遠のいてた。祖母の葬儀を機に実家に帰った彼は、父親の体調が悪いことを知らされる。夢を追いかけるか、家業を継ぐか。迷った末、ナミヤ雑貨店に相談の手紙を出すが・・・。魚屋ミュージシャンの話は一番好きです。自分も今、両親に迷惑をかけているので、身につまされました。好きなことやれって、親は言ってくれるけど、きっと本心では早く結婚して孫の顔を見せて欲しいんだろうなとか・・・考えますもん!すごいなあ、親の愛。そして、魚屋ミュージシャンの最期にも感動しました。
「シビックで朝まで」ナミヤ雑貨店の店主、浪矢さん一族の話。ほんの遊び心から始めた悩み相談に、だんだん真剣な相談が混ざるようになった。ナミヤさんは死期が近づいた頃に「自分の回答は果たして正しかったのか?」と疑問を抱くようになる。これが、ナミヤ雑貨店一夜限りの復活につながっていたのだ・・・。クラスメイトに関する問題を出題・・・。こんなの成功するわけねーじゃん!とクラスでは底辺だった私は思います。あの人たち、私らのことなんか邪魔やと思ってますもん・・・。
「黙祷はビートルズで」少年は夜逃げの最中に逃げ出した。ナミヤ雑貨店のアドバイスを無視して・・・。新しい人生を手に入れた少年は、やがて青年になり、木彫り職人になる。入っていた児童擁護施設「丸光園」が火事になったと聞き、駆けつけた青年はある女性と会う。うーん、上手く行き過ぎてなんだかなあ・・・。全体的にいえることですけど、ナミヤさんのアドバイス通りにして良かったっていうのは、すべて結果論ですから・・・。従わないっていう選択を書いたところまでは良かったんですけど、最終的にナミヤさんに花を持たせるのはどうかなと思いました。
「空の上から祈りを」事務員の女性は、掛け持ちの水商売の仕事で独立したいと考えていた。援助してくれるという男性もいる。この相談を受けたナミヤ雑貨店にいる3人は、彼女を思いとどませるため、投資のアドバイスをする。結果的に、彼女が道を誤らなかったのは良いことだと思います。しかし、未来のことを教えた結果、彼女は大金を手にするわけで、そこまで過剰な成功をアシストする必要があったのかな?と思います。経済の勉強をした結果、彼女が成功したという話なら納得です。だけど、これはズルですから。私はズルは嫌いです。実はこの3人も「丸光園」の出身で・・・というできすぎた展開には、そこまで関連性を持たせる意味ってあるのかな?と思いました。
いい話なんですけど、後半のあざとさが目に付きました。


PR