「亡霊ふたり」
名探偵の資質とは、謎を解き明かす能力以上に、謎に出合う能力。名探偵志願の女子高生は魅力的な謎を求め、日夜努力を積み重ねる。自らの探偵活動に、彼女は毎度ボクシング部所属の男子高生をつき合わせるが、彼女は知らなかった。彼が卒業までにひとをひとり殺そうと計画している、殺人者志願の少年であることを!
ダ・ヴィンチのプラチナ本で紹介されていて、おもしろいのかな~と思い読んだのですが・・・。どうにも物語に乗り切れませんでした。
この本は、ミステリーと同時にボーイ・ミーツ・ガールの要素も併せ持った、いわゆる学園ミステリものです。ポイントは、探偵・・・ではなく名探偵志願というところ。謎は待っていてもやってこない。謎は自ら探しに行くもの!というアグレッシブなお嬢さん・若月ローコが登場します。そして、助手は殺人計画を練っている主人公・高橋和也です。
謎自体は、最初は青いカキ氷の謎とか、遅れて聞こえるピストルの音(陸上のスタートの合図)とか、結構おもしろかったです。しかし、廃校・吏塚高校が脱法ハーブの生産工場になってて・・・のくだりでは、ローコがエライ目に遭わされてたりして、若干ひきました。オムツのくだりとか、いります?
で、なんで乗れなかったかというと、ズバリ主人公たちの思考がよくわからなかったからです。「名探偵の証明」(市川哲也)でも感じたのですが、私は、名探偵とはいかなる存在か?どうあるべきか?という名探偵論には全く興味がありません。名探偵って、謎があれば解かずにはいられない、愛すべき変態なんです。もう、変態にどうして変態なんですかとか聞いても仕方ないっていうか・・・。まあ、例えが極端ですけど、もっと上品にいえば数学の公式の意味のようなもので、根拠はあるけどその根拠にはさして興味をひかれないし、知らなくても特に問題ないって感じ・・・。
和也が「自由に生きるため」に殺人者になりたいというのも、さらに意味不明。それは、邪魔者は抹殺して思い通りに事を運びたいというわけかね?まあ、殺人というものは個人のエゴイズムによって引き起こされることだから、あながち間違っちゃいないんだけど・・・。なんか、胸をはって宣言されるとものすごいダメ人間に見えてくる・・・。「これからの人生、俺は人知れず邪魔者を抹殺しながら自由に生きていく!」甘いな。思い通りにいかないことだらけ。それが人生・・・。
私は、詠坂さんの本を読むのはこれが初めてなのですが、何かのシリーズの一部?のようです。2人が理想としている名探偵と殺人者が出てくるような感じ・・・ですね。それを読んでいれば、2人の考えが理解できたのか、どうか。
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