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読書の記録です。

「名もなき毒」

宮部みゆき/幻冬舎

企業で社内報を編集する杉村は、調査のために訪れた私立探偵・北見の所で、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生と出会う。『誰か』以来、3年ぶりの現代ミステリー。

帰ってきた婿養子。前回より、ぐっと杉村さんの内面に迫っている印象を受けました。なんか、前より彼が幸せそうに見えなくなったというか・・・。むしろ、しんどい人生選んだよなー、ぐらいの気持ちになりました。
全く関係の無さそうな2つの事件が、最後にまとまってゆく過程がきれいだった。いつもはくどい、と思っちゃうんですけど今回は、緻密という印象を受けました。読みやすかったし。
後半の盛り上がりは、少しやりすぎちゃった感がありますね。原田いずみのような人間は、確かにいると思いますけどね。世の中には、想像の範疇を超えた人間がいっぱいいるんだなー、と実感しているところなので。良くわかるかも、うん。ただ、お話自体が地味ーな感じなので、もっと地味ーに終わらせて欲しかったなあと。
大きなテーマとして、人間誰しもが持っている「悪意」を取り上げていると思うのですが、これに関しては、うーん、安易な決着かなという気がします。そういう私が深い考察をしているかというと、そこが痛いところなのですがー。悪意は毒なのか。一概に、「こんな悪い出来事が起こったのは、世の中にはびこる悪意のせいなのだ。これは社会の毒なのだ。」と言い切っちゃっていいものかどうか。じゃあ、あなたには、何かを壊してしまいたいという衝動はないのか。それを悪だと括ってぽいって捨てれるのかな。


「毒ですね」

「は?」

「やっぱり毒だったんですよ」


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