「坂木司リクエスト!和菓子のアンソロジー」
読書家としても知られる坂木司が、今いちばん読みたいテーマを、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して、作った、夢のようなアンソロジー。和菓子モチーフの新作短編集。
同シリーズの「ペットのアンソロジー」がなかなか良かったので、他のも読んでみようと思ったしだい。ネームバリューのある方をこれだけ集めるってすごい!
「空の春告鳥」(坂木司)アンちゃん再登場!「和菓子のアン」は坂木作品の中でも好きなので、アンちゃんにまた会えて嬉しかったなー。休日に出かけたデパ地下の和菓子売り場で、店員に対して怒ったおじさんが言い放った「飴細工の鳥」とは何を意味するのか・・・?まだまだ修行が足りないのはみんな一緒。足りないものは、補えばいい。坂木さんのお仕事話は、さりげないエールが込められていてステキだなあと思います。
「トマどら」(日明恩)響きだけで、猫を連想してましたが、全然違いました。主人公のもとには、気に入っている和菓子屋から、定期的にどらやきの詰め合わせが送られてくる。ある事情から、主人公が和菓子屋にいけなくなったためなのだが、そのある事情とは・・・。日明さん、久しぶりだなー。確か偽善的な感じが好きになれなかったと思うのだけど、これは結構良かったです。お姉ちゃんはなんだかんだで妹を許したんだろうなあ。これからも苦労しそうな姉がかわいそう。さて、トマどらとは・・・?
「チチとクズの国」(牧野修)はじめましての作家さん。人生に行き詰まり、生家で自殺を試みるが失敗した主人公。そこに死んだはずの父親が現れる。私も大人になってから和菓子に目覚めたクチなので、その気持ちは良くわかった。餡子ってなかなかいけるなあっていう。
「迷宮の松露」(近藤史恵)まさかのモロッコ!仕事に疲れ果てた私は、モロッコで長い休暇を過ごしている。偶然出会った和菓子と祖母の思い出、モロッコのお菓子が交錯して、疲れた心をほぐしてくれる。松露って、キノコっていう意味なのかー。勉強になりました。
「融雪」(柴田よしき)柴田さんのも久しぶり。これは、話自体は昔の恋人がよりを戻すだけなんだけど、料理がおいしそうだった。ランチ食べに行きたい!キッシュ大好物!大根のステーキとかたまらん~。デザートの牛乳かんもおいしそうで、自分で作ってしまいました(こんなことは稀)。イチゴとミカンと2種類。私もミカンの方が好きだなー。
「糖質な彼女」(木地雅映子)はじめましての作家さん。ひきこもりの主人公が、病院で元アイドルに誘われて作業療法(和菓子作り)に参加することになる・・・という話・・・。なんだこの設定は・・・。言いたいことはわかるけど、話としてはおもしろくなかった。
「時じくの実の宮古へ」(小川一水)小川さんの本、気になってるんですが、いまだ読めておりません。温暖化が進み、日本の西一帯は人が住まなくなった未来。和菓子のルーツを求め、父と工次は宮古を目指す。和菓子・・・宮古島・・・?ではなく、都=京都=和菓子だった。残念ながら京都は焼け野原になっていたけれど、和菓子はこれからも進化を続けるのだと思う。世界観はおもしろかったけど、どうも話には乗れなかった。チョコは必要ないような・・・。
「古入道きたりて」(恒川光太郎)恒川さんのも久しぶりだなあ。戦友から聞いた古入道の伝承。老境にさしかかった主人公は、古入道を求めて山に分け入る。唯一、テーマ度外視の作品。笑。もののけ姫みたいな雰囲気です。コダマ出てこないけど。
「しりとり」(北村薫)北村さんの本も色々読みたいんですが、いっぱいありすぎて、却ってきっかけがつかめないという悪循環。作家の私は、古いつきあいの編集者から彼女の夫が病床で作った俳句の話を聞く。それは、言葉の間に和菓子を置いたものだった・・・。北村さんのミステリはいつも上品で感心してしまいます。シンプルな謎解きですが、雨の日に出会った2人の初々しさ、みずみずしい輝きであふれていました。そして、今も同じようにあなたを大事に想っている。ってことなんだろうなあ。いい話でした。
「甘き織姫」(畠中恵)主人公の学生時代の友人から、相談の電話がかかってくる。彼は職場の後輩にひとめぼれし、プロポーズの意趣を込めて和菓子を送ったのだが、彼女からの返事は和菓子のお返しだった・・・。和菓子の意趣返しに込められた意味を推測する話なのですが、串カツがやたらとおいしそうだった。百絵さん、うちにも作りにきてー!御岳くんの意味不明な自信が、理解不能。橘さんに同情します。しかし、上司にセクハラの報告もせず、粋に和菓子でお断りとはできたお嬢さん。御岳くんにはもったいない!身の程知らずだね!
さてさて、残るは本屋さんのみ。
PR