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読書の記録です。

「感染遊戯」

誉田哲也/光文社

捜査一課殺人犯捜査係のガンテツこと勝俣・倉田・葉山がそれぞれ担当した殺人事件。事件の規模も様相もさまざまだが、共通している点が、ひとつあった。それは、被害者の個人情報を、犯人は何らかの手段で手に入れているらしきこと。事件の背後には何があるのか・・・。

しまった、またやっちまった!「インビジブル・レイン」が先だったか!
・・・読んでしまったものはしょうがない。インビジブル・レインも映画で見たので、まあ、いっか・・・。と言いつつ、今回は自信を持って選んだだけに、ちょっとショック。
連作短編集、と見せかけて大きなひとつの物語としてまとまっていました。お見事!今回は、玲子主任の出番は少なく、お下品なガンテツ、子供が殺人犯になってしまった倉田、姫川班解体後のノリが主人公です。オヤジ祭りです(ノリはまだ若いかー)。
第一話では、製薬会社サラリーマン殺害事件。事件発生後、しばらくしてから犯人が警察に出頭してきたが、黙秘を続けている・・・。実は人間違いで、官僚である彼の父親がターゲットだったという話。第二話は、倉田が刑事を辞める前の事件。通り魔殺人事件と思われたが、実は被害者の男女は外務省の役人と愛人だった。かつて彼らにはめられた記者が、恨みを晴らすため犯行に及んだ。第三話は、老人同士のケンカの背後にあった意外な動機。ここで、読む順番を間違えたことに気付く。第四話は、総まとめ。一連の事件から官僚の個人情報を流しているサイトがあることにたどりついたガンテツたち。関係者をつなぐものとは?
非加熱製剤によるHIV感染や、年金問題、官僚の殺傷事件など、5・6年前?(もうちょっと前かな?)の社会問題が取り上げられています。外務省がホンマにクズみたいに書かれてて、大丈夫なのかしらーと思いました。ゴムボートで亡くなってた方もいましたよね~。あれ、なんだったんでしょうね~。
倉田のその後も出ていました。かわいそうな人だよね、倉田・・・。彼女が殺して欲しいって頼んだのかもしれないけど、ダメだよ!そんなの理由にならない!だから、息子のことは特にかわいそうだとは思わないんだ・・・。倉田さんの「殺人は選択の問題」説には納得です。後半のすさんだ倉田さんもなかなか良いです。まあ、倉田さんも罪を犯しているので、幸せにはなれないか・・・。
最後は、スペシャルドラマの方が好きだなあ。悟っちゃうより、恐怖に怯えて欲しいというか・・・。自分は手を汚さないで、人の気持ちを操って復讐を果たすなんて、卑怯だよなー。私は社会に対する漠然とした不安や不満があるだけで、明確な恨みはない。だけどもし、政府や社会なんて捉えどころのないもののせいで、自分の大事な人が亡くなってしまった場合、一体何に怒りをぶつければいいのだろう?裁判で勝ったって、何かの罪で悪い政治家や官僚が捕まったって、彼らにとっては大きなダメージではないし、失われた命は戻らない。そこで、殺人という手段をとる人がいても少しも不思議ではないと思う。
結局、殺意が巡り巡って、自分のところに還ってきたようなもので、ガンテツと一緒に何だか徒労感を感じました。他人を巻き込むからこういうことになる!最後のガンテツと玲子とのやりとりに和みました。仲良しじゃないけど、張り合いのあるライバルってとこですかね。そうそう、いつの間にか玲子さん本庁に戻ってたんですね!だめだ、もう時系列がわからない~。
JTのサイト内(ちょっと一服広場)で、姫川玲子シリーズの短編が読めますよー。


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