「横溝正史自選集〔2〕」
ニューギニアで共に戦った鬼頭千万太の最後の言葉を胸に、鬼頭家が網元として君臨する獄門島に降り立った金田一耕助。やがて千万太の予言どおりに、血も凍る殺人事件が発生する。瀬戸内海の孤島に渦巻く、世にもおぞましい計略に耕助は気づくことができるのか?
久しぶりに読んだな~。2巻目は「獄門島」。私の一番好きな獄門島!
なんで獄門島が一番好きかといいますと、一番の理由は犯人の意外性にあります。横溝さんの作品の犯人は女性(美人でちょっと影がある感じ)が多い、というのはみなさんご存知だと思います。なので、大体あやしげな人物がわかってしまうという欠点が。2時間サスペンスで、配役から犯人がわかっちゃう時と似てますね。詳しい言及はさけますが、これはそういったセオリーから外れた犯人で、最初に読んだときびっくりしたというのがあります。しかしそれが、奥さんの名推理からのものとは・・・!さらに、最初は横溝さん、奥さん叱ったって・・・!最後にはちゃっかり採用しているのにー。
殺人事件が完遂してから犯人を追い詰める、ある意味役立たずの名探偵・金田一耕介。(褒め言葉)犯人は、金田一さんに完敗したと言っていましたが、あれだけフェアなヒントをもらっていたのに、間に合わなかった金田一さんの方が負けでは・・・?途中、めっちゃミスリードにひっかかってたくせに、早苗さんのせいにしたり、聞き間違いを和尚さんのせいにしたり・・・。改めて読むと、器が小さいぜ、名探偵!笑。一番印象に残っていシーンが「むざんやな冑のしたのきりぎりす」。あの、鐘の下から死体が出てくるところは、どきどきしたものです。犯人の末路も、そうだったんだ~と思い出しました。必要のない殺人を犯したってことで、なんだか報われないなあというオチでした。
本鬼頭と分鬼頭の確執や、復員、海賊・・・と戦後の混沌とした時代背景が、横溝さんの作品の魅力です。たとえ、調べものに出かけている間に、新たな犠牲者が出てたって!ちょっと抜けてる名探偵。だけど、うんうんうなって悩んでいる姿を読んでいるだけに、謎が解けたときの爽快感もひとしおです。
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