「英子の森」
英語ができれば世界は広がる。それは誰かが作り出した幻想かもしれない。英語を使う仕事を切望しながら、派遣社員を続ける英子。自分のアイデンティティに疑問を持ったとき、母親と2人で暮らしている森が崩壊し始める。
母経由の本。自分では選ばないであろうジャンルの本でした。新聞で松田さんの記事を読んだときは、綿矢りささんに雰囲気が似てる?という印象でした。実際読んでみると、淡々とした語り口調には共通点が見えますが、作品全体の雰囲気は違いました。
「英子の森」表題作。母親の「あの人みたいになってはいけない」という呪縛にからめとられた英子は、とにかく英語を使った仕事に就くことを希望していた。英語の仕事は色々あるように見えて、成功している人はほんの一握り。英子は派遣会社に登録しているが、英語を使う仕事と普通の仕事の時給の差はたった50円。・・・うーん、私は英語がからきしダメなので、英語を使う仕事のなかで、こんなヒエラルキーがあることも知りませんでした。英語が喋れれば未来は約束されている!っていうのも短絡ですけど(笑)、まあ、英語できないよりできた方が絶対良いですよね。英語できるからって、グローバルっていうのもちょっと違うと思いますけど。最近は社内の公用語を英語にしたりする会社があって、グローバルってそういうことなの?とひっかかります。まず、日本語をきちんと使えるようになろうぜ!母親と娘の閉塞した森は、一度崩壊するけれど、最後に再生する。母娘の関係の破壊がテーマかと思っていたので、えっと・・・、再生していいの?と思いましたけれども、本人たちが良ければ良いのでしょう!オッケー!・・・英子の彼氏、すかしすぎてぶん殴りたくなったのは、私だけでしょうか?なんだよアイツ!何がオレの森だよ!枯れちまえ!
「※写真はイメージです」すべては脳が認識しているもの・・・ということ?ちょっと謎でした。
「おにいさんがこわい」人は思っていることの八分の一も言葉にできない。思っていることの全てがダダモレてしまうと、大変なことになっちゃうわけで。これくらいがちょうどいいのかなあと思った。うたのおにいさんやおねえさんはすごいのです。
「スカートの上のABC」よく覚えてないんですが・・・。久しぶりにスカート欲しいなと思った。スカートって、気分が上がります。
「博士と助手」精神病の治療を研究する博士と、博士のことがヘドが出るほど嫌いな助手。ちょっとSFな雰囲気。
「わたしはお医者さま?」暗闇のなかで職業を当てるゲームをする人々。本当の職業だったり、架空の職業だったり・・・。ペンギンナデはいいですねえ。欲を言えばペンギンだけでなく、色々な動物をなでなでしてまわりたいですねえ・・・。と和む話ではなく、もうすぐこの世が終わってしまう瞬間であることが最後に明かされます。どんな自分であったのか?本当はどうありたかったのか?自分の人生を振り返る機会があることは幸せなのかな・・・。星新一さんの世界観を思い出します。本の中で一番好きな作品。
PR