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読書の記録です。

「英雄の書」

宮部みゆき/毎日新聞社

お兄ちゃんが人を刺すなんて…。“英雄”に取りつかれた最愛の兄を追って、少女は物語の世界に降り立った。そこで彼女は、すべての物語が生まれ帰する一対の大輪を前に、恐るべき光景を目にしてしまう。

毎日新聞の夕刊で連載されていた作品。うちは毎日新聞を購読していまして連載のお知らせが出た時には「読むぞー!」と意気込んでいたのですが・・・。お恥ずかしいことに、夕刊毎日読まないもんで、気がついたらもう取り返しのつかないことになってました・・・。そもそも、新聞の連載小説って1回の掲載量が少ないからまどろっこしくて、途中で「ええい、もう、単行本になってからまとめて読むわー!」とやけっぱちになってしまいます。毎日のことなんで、仕方ないってわかってるんですけれども。ええ。
時代小説、ミステリー、怪談、ファンタジー、と引き出しをいっぱい持っておられる宮部さん。今回はファンタジー。ファンタジーと言えば、「ICO」の悪夢(無駄にくどかった)を思い出して、めっちゃ不安だったんですが・・・。上下巻というボリュームに関わらず、すっと読めました。読みやすいファンタジーではないかと思います。
とにかく世界観がしっかりしていて、物語のルールもぶれていない。色々なことが最後に明かされて、そこはちょっととってつけたような印象はありましたが、伏線はきれいに回収できていたかと。友理子が訪れた無名の地は、物語が生まれ、また還ってゆくところなのですが、物語が必ずしも友理子の住む世界から生まれたものではない、というところが興味深かった。領域(リージョン)という呼び方になるのですが、領域は一つではなく無数にあり、物語も人が書いたものだけでなく、物語の中の登場人物が書いたものもまた一つの物語として存在している。入れ子みたいな構図で、メタな雰囲気・・・。
友理子の言動が短絡的なことがままあり、そこはイラッとさせられますが・・・。小5だし、仕方ないか・・・?一方、友理子を取り巻く大人たちは、ものすごくオトナで包容力があってすごいなーと思いました。アッシュとか。私だったら、ガチで喧嘩してますねー、子供相手に。笑。
現実に、大樹は人を殺してしまっているので、ハッピーエンドは難しいだろうな、とは思っていました。その中でのベストな終わり方だったと思います。黄衣の王を封印することはできなかったけれども、大樹を成仏(?)させたことはできたわけですし。
友理子のその後とかって、絶対続編とか出そうだなー。むしろ出て欲しいなー。強くなった彼女に会ってみたい。


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