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読書の記録です。

「魔王」

伊坂幸太郎/講談社

不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作!

やばい!超能力が出てきた!
現代ミステリーと超能力の融合はおもしろいと感じたことが少ないので、危機感を感じました。ところが、振り返って見ると超能力も政治も通り越して、後に残っているのは一人で立ち向かったお兄さんと、その意思を継ごうとしている弟と二人の背中なんです。うわー、すごい。“呼吸”のラスト部分を読んで泣きそうになりました。一番最後で抜粋してますが、これだけでは何がなんだか・・・ですね。笑。
シューベルトの“魔王”と宮沢賢治と言えば、知らない人はいないと思います。特に表題作“魔王”は、子供が自分だけに見える魔王に恐怖を覚える姿が安藤と見事に重なります。宮沢賢治は、“銀河鉄道の夜”でダウンした記憶が・・・。そのイメージ(不思議空間)が強いので、詩を書いているなんて知らなかった。“注文の多い料理店”は好きです。ドゥーチェのマスターの言うことにも一理ありますが、結局自分も能力を使って干渉しているのだから、何もそこまでしなくても・・・。(彼がしたことかどうか確証はありませんが。)他にも反対する人はいたみたいなので、もう少し時期を待って犬養反対派超能力仲間を集めて(5人くらい)、超能力戦やったら勝てたかも!と思わずにはいられません・・・。違う話になるか・・・。
何かに寄りかかって歩むのは悪ではない。けれど、考えることを放棄してはいけない。
・・・ところで、冒険野郎マクガイバーが気になる・・・。


「その瞬間、私は自分がいるのがマンションの一室であるにもかかわらず、頭上の天井や屋根が取り払われるのを感じた。上を見ればそこには、決して手の届かない空が広がっていて、旋回するオオタカもかすかに確認できた。気を抜くと先ほど見えた、荒れ果てた土地の光景が現われるような恐怖もあり、私は必死に、その澄み渡る空を見つめ続ける。力を抜き、手を揺らせば、その遥か遠くの青空に向かい、身体が飛ぶようにも思えた。未来は晴朗なものなのか、荒廃なのか。」


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