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読書の記録です。

「バスジャック」

三崎亜記/集英社

バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作“バスジャック”他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編。

前作“となりまち戦争”と同じく、舞台設定が独特。前半4作は設定に負けている、または設定の斬新さ以外何も感じませんでした。その発想はすごいと思うのですが、だからどうしたと。
その点、後半の3作は良かったー。このギャップの大きさは何なんだろう。笑。
“雨降る夜に”は、とてもきれいなショートショート。欲を言えば、彼女が僕の部屋を図書館と勘違いしているのだろう、という説明的なくだりを省略するともっと神秘性が増して良かったのでは。“動物園”は読者の中のイメージを膨らませてくれます。イメージを具体的な形にできる可能性はとても魅力的。一見ファンタジックな能力を、ビジネスとして描くことで冷静に見つめることができました。しかし、社長と主人公のちょっとわけありな関係は蛇足、かな。“送りの夏”は夏の眩しい光とともに、死を哀しく爽やかに描いた作品。人形と暮らす住人は最初不気味に映ったけど、いつの間にかそれをあまりおかしくないと感じるようになりました。別れに時間が必要な人もいる。ただ、人形とともに過ごすことで気持ちの整理がつくのかは非常に疑問。麻美の葛藤とともに考えさせられます。


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