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読書の記録です。

「戦鬼」

川口士/富士見書房

突如、人間達に襲われた鬼の村。17歳の鬼の少年・温羅は捕らえられ、彼の父の首は都に晒される。復讐に心を燃やす少年・温羅と人間の少女の旅の物語。

富士見ファンタジア大賞、大賞作品にかける、あたいの期待は大きいよ!
ライトノベルファンの方々はご存知でしょうが、大賞作品は過去3回しか出ていません。五代さんは未読なのですが贔屓の作家さんだし、滝川羊さんの「風の白猿神」は読後、続きが出ていないことが非常に残念でした。実は今も密かに続編を待っています・・・。貴子さんの「12月のベロニカ」。感動モノという宣伝文句に、「絶対泣かねーよ!」と思って挑んだのですが(私はひねくれ者なので、感動狙いの作品に挑む時は、大体このような心構えをします。)、読み終わった時は、おいおい泣いていました。そして、私は信じることにしたのです。「ほかの受賞作は当たりハズレがあるかもしれない・・・。だけど、だけど、大賞だけはハズレなしだっ!」心の叫び。
私が何故に、こんなにも大賞受賞作を支持するかというと、情熱を感じるからなんです!引力!パワー!読む前の先入観なんて、力技でひっくり返して欲しいわけです。
で、この長い前フリで何を言いたかったかというと、4度目の大賞受賞作を読んで、早くも私の「大賞受賞作、ハズレなし」がひっくりかえってしまったということですー・・・。ファンタジア大賞の新人さんには甘めなので(笑)、作品についての不満を書き連ねるつもりはありません。
・・・いや、一つだけ!せめて、名前をもう少しひねって欲しかったです。まー、主役級もそのまんまなんですが、「猿・鳥・犬」「鍬戸(くわと)・鍬矢(すきや)」とか涙が出そうになりました・・・。農具やん・・・。涙。鬼さんと梓ちゃんの心の交流は良かった。伏線は蛇足だったような・・・?式神スキーな私は、川楊さんの後半の盛り返しが好きでしたー。戦いのシーンは、臨場感が出るともっと良くなると思います。
こんな感じで、いわゆるフツーの和風ファンタジーです。もし、この作品が大賞以外の賞なら、普通におもしろいと感じたと思います。パワー不足だー、とか、期待ハズレだー、とか、がっかりする必要など無かったはず。私で、これですから、もっと辛辣な感想を持たれる方もいらっしゃるでしょう。大賞以外でも、活躍されている作家さんは、たくさんいらっしゃいます。そこで、「なぜ、編集部は、あえてパンチ不足の作品を大賞に選んだのか?」という疑問を感じてしまうのです。大賞を出して行こうという方向性に変わったのか、編集の顔ぶれが変わったのか・・・。何が起こったのか、内部の思惑を想像してしまいます・・・。ホントのところはどうなんでしょう?
批判的になってしまいましたが、おもしろくないというわけでは無いので、興味を持たれた方は、一度手にとってみてはいかがでしょうか。


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