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読書の記録です。

「はじまりの骨の物語」

五代ゆう/ホビージャパン

焔の魔術を操り、「冬」と戦う女戦士ゲルダ。彼女が属していた軍は、彼女の恋人であり養い親であるアルムリックの裏切りによって壊滅する。裏切ったアルムリックを討つため、ゲルダは復讐の旅に出る。

富士見ファンタジア大賞受賞作が再刊!・・・したのは嬉しいのですが、なぜHJ文庫で?という疑問を感じざるをえないのです。富士見から版権をひきあげて、HJで再刊・・・?と勘繰ってみました。いや、たぶん、たまたま再刊してくれるというところがHJ文庫だったと。それだけだと思いたいなあ。
下世話な詮索もあって、本への入りはマイナスイメージだったのですが、どんな裏事情があるにせよ無いにせよ、いいものはいい、ということで非常に楽しめました。
作中も、世界を脅かす存在のモチーフに「冬」が用いられていて、気温マイナス。こちらは、王道ファンタジーの世界観で良かったと思います。
裏切り、別れ、出会い、そして別れを繰り返す様は、正にドラマチック。いやー、私はかわいい王子さまが好きだったので、途中で読む気を無くしそうになりましたよ。はあ・・・。次は、やっぱりゲルダかな。ジャガー横田さんが、「プロレスやってる女の人は、そこら辺の着飾っている女より女らしい」と言っているのを聞いて、なるほどと思ったことがあります。それは、物語の世界にも通用することで、戦う女性は、男性的ではなく女性的だと感じます。何だろう、強いんだけど、かわいいんだよね。
ゲルダが、アルムリックに執着するように、アルムリックもまたゲルダに執着しているのだと私は思ったのですが、どうなんだろうな。王子に関しては、絶対にアルムリックのやきもちだと思う!なんだよー、心の狭い男やなあ。
クライマックスに関しては、とても自然な流れだったと思うし、ゲルダはどこまでも自由であって欲しいなあと思います。
ただ、途中の樹の中へ取り込まれるあたりから展開が苦しかったかな・・・。ちょっと強引。これ、後半だけで1冊費やしても十分だと思います。


「善悪の区別などもろい砂の城にすぎない。立つ場所を変えれば、やすやすと崩れ去る。」


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