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読書の記録です。

「精霊の守り人」

上橋菜穂子/新潮社

女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。

新潮文庫の100冊よりチョイス。
読後、インターネット配信されていたアニメを見ました。オープニングのラルクの曲にげんなりしてしまい、本編は見ずじまいでした。あまりにも、私のイメージとはかけ離れている・・・。
舞台は、アジア、例えば中国のような広大な土地をイメージしていました。きちんと民俗の伝承や、歴史に踏み込んだ考察がなされているなあという印象を受けました。かといって、難解かというと、そうではなく、わかりやすい言葉と表現で文章が構成されています。なるほど、これがどの世代にも受け入れられた理由か。
初期チャグムの「~じゃ」喋りがかわいかった。おんぶとか。うーん、全力で甘えられる大人が側にいるということは、幸せなことだよな・・・。預けられたのが、バルサで良かったなーとしみじみ。
チャグムとバルサの交流がとにかくいいんだわ。バルサの包容力は、大人ならではのもの。でも、バルサはバルサで、抱えている悩みや葛藤があって、それをチャグムとの交流の中で見つめなおしていく。まあ、バルサとタンダの関係は、もうすでに落ち着いた空気をかもし出しているので。笑。このままうまくいくんだろうな、という気がします。
最後は、何を勝手なことを!と思ったものですが、ニュンガ・ロ・イムと同じく、それが王族に生まれついた彼の荷物なのだろうなあ。彼だけではなく、物語の登場人物たちも、そして現実世界に生きている私たちも、何かしらの荷物を背負っていかなければならない。それを、荷物だと思わないことなんて、できるのだろうか。


「「おまえがたすかって、ほんとうに良かった。まにあって、ほんとうによかった。」
 それを聞いたとたん、心の底から身体全体に、じんわりと熱いなにかがひろがってきた。
(たすかったんじゃない。-たすけられたんだ)
 ふいに、その思いが強く心に迫ってきた。卵の欲求を感じていた自分でさえ、自分を犠牲にして卵をたすけよう、とは、なかなか思えなかった。それなのに、あの恐怖の中へ、この人びとは、みずからとびこんできてくれたのだ。
 皇子だった頃、彼は、守られるのがあたりまえだと思っていた。けれど、いまは、それがいかにあたりまえでないかが、よくわかった。
 チャグムは、よいほうの腕をバルサの首にまわし、ぎゅっと抱きついた。
「ありがとう」
それ以外なにもいえなかった。」


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