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読書の記録です。

「私の男」

桜庭一樹/文藝春秋

優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る。

・・・びっくり。
この作品で、桜庭さんは直木賞作家になってしまわれたのですか・・・。こ、これは、他人に一番オススメできないではないですかっ!私は、近親相姦がダメなんです~。トリハダが立っちゃうよ~。ブツブツ。
震災で、幼い頃家族と死に別れた花は、親戚の淳悟に育てられる。やがて花は成長し、結婚式の日を迎える。彼女は、この生活から脱け出せる、と思う一方、養父から離れられないであろう自分も自覚する。果たして、この親子の間にある秘密の匂いの正体とは、何なのだろうか・・・。
語り手を代え、時代を遡りながら2人の過去が暴かれていきます。それも少しずつ、というところが上手だなあ、と思います。上手と言えば、この時系列も良かったのでは。淳悟が、花を本当に大事に思って引き取った、という心情を最後に持ってきたことで、いくらか嫌悪感も和らいだかなあ、と。
私は唯一、大塩のおじいちゃんとシンクロできましたよ!笑。「家族って、そういうことをしなくても一緒にいられるものなんだ」的セリフには、うんうん頷くくらいでした。これも、私がごく普通の家庭に生まれ、両親からの愛情を受けて育ったからでしょうか。こうしないと、つながりを実感できないなんて。依存しないと生きていけないなんて。
色々感想を拝読していると、この2人の関係を容認している方が多いことにびっくりしました。いやー、私は心にトリハダが・・・。なんか、実の娘にわいせつなことをして、その画像をネットに流す本当にケダモノのような父親とか、そういうニュースを思いだしてしまった。児童ポルノの問題とか。たとえ、花自身も求めた関係であったとしても、父親は子供にすがって助けを求めるべきではないだろう、と思う。これは精神的にも言えることだと思う。娘にすがって「おかぁさん」は、ちょっと、おかしい、でしょう?アンタ、それを娘に求めるの・・・?
本来のテーマは、もっと違うところにあるのだろう。と想像してみるけれど、こみ上げるのは嫌悪感だけで、わからない。


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