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読書の記録です。

「裁縫師」

小池昌代/角川書店

広大なお屋敷の鬱蒼とした庭の離れに、アトリエを構えるひとりの裁縫師。ある日、9歳の「わたし」は、自分の服をあつらえてもらうために、母に連れられて裁縫師のもとを訪れる(「裁縫師」)。詩情とエロティシズムあふれる5篇を収めた珠玉の小説集。

ダ・ヴィンチのプラチナ本で紹介されていた本です。表紙がキレイ。地味ーにプラチナ本を制覇していこうという計画が、今、立てられた・・・!(ナレーション風)
各話ごとに、ちょちょいと感想を。
「裁縫師」。一番エロい。笑。女はまさに、生まれた時から死ぬその時まで、女以外の何者でもないのだなあ、と思った。私、ロリコン嫌いなんだなあ・・・と再確認した話でもあった。オーダーメイドの服って、憧れます。生地の手触りが伝わってくるような、静謐な雰囲気。
「女神」。この話は結構好き。ある町に魅入られて、移住してきた「ぼく」。そこで、彼は町の女神と言われる女性に心を奪われる。まるで、昔話で教訓めいた話を読んでいる気持ちだった。結局、祭りの夜に彼が愛を交わした女性とは何者だったのか・・・。っていうか、人だったのか・・・?
「空港」。お正月に、叔母から叔父の出迎えを頼まれる。断りきれず、洋子は空港へと向かうのだった。しかし、現れた叔父は・・・。叔父は・・・!何かの幻だと言ってー、というオチ。結局、淡い気持ちを踏みにじられるためだけに、空港行ったんかい!私の中の孤独を、呼び覚ます話。
「左胸」。オチが一番キレイにまとまっている作品。犬スキーとしては、犬だけでも助けて欲しかった・・・!私は、自分が思っているよりも、人間の形に縛られているなーと思った。
「野ばら」。女の子が不憫、の一言に尽きる。美知子は、確かに自由を手に入れたかもしれないが、家から離れられないというのは、一種の不自由ではないだろうか?家を出て行った家族も、逃れられない何かを持っていると思う。しがらみの無い生なんて、無い。
事実をそのまま記憶することは出来ない。だから、思い出は、甘い。


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