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読書の記録です。

「きのうの世界」

恩田陸/講談社

塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。一年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?誰も予想できない結末が待っている!!

町の歴史や言い伝えをミステリーに絡めてくるのは、恩田さんの得意技ですなあ。物語は、語り手を変えて、時系列を変えて、進んでいきます。舞台となるのは、「塔と水路の町」。そこで起こった、水無月橋殺人事件を調べるために“あなた”はこの町を訪れた。
この“あなた”が誰なのか、非常に気になるポイントだっただけに、あっさりしたネタばらしはちょっと物足りなかった。あんまり関係ない人だったしなあ。ただ、彼女の幼少時のエピソードはちょっとほろりとしました。いい話だっただけに、その後の過労と偏食が原因で・・・という決着のつけ方が残念だった。
本編が静ならば、クライマックスは動。ゆるやかな流れの中で、ひっそりと息を潜めている何者かがいる・・・といった雰囲気から一変します。大雨が町を襲ったあとは、突然の火災。そして明かされるすべての謎。・・・そうなんです!珍しく風呂敷がたたまれた結末となっております。まあ、カラスは正直「えー・・・」という感想でしたが。笑。結局のところ、ばーちゃんの思惑通りにことが進んだ、ということでよろしいか!孫も含め、ここの女は恐い・・・。
ところで、見たものをそのまま記憶できる特殊能力って、色んな本でぼちぼち見かけますけど、便利なようで不便!な扱いでかわいそう。自分は、暗記モノは書いて覚える人で、めっちゃ苦労するんで、単純にうらやましいなー。
そもそもの発端は、この家系から始まった。町の仕掛けは無事に作動し、災害は避けられた。けれど、市川吾郎のような宿命を背負った人間が必ずまた生まれる。この連鎖は永遠に続いてゆくのだろうか?


「心配しないでね、って言ったの。忘れないでね、じゃなくて」


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