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読書の記録です。

「茗荷谷の猫」

木内昇/平凡社

新種の桜造りに心傾ける植木職人、乱歩に惹かれ、世間から逃れ続ける四十男、開戦前の浅草で新しい映画を夢みる青年。幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を超えて、名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。

地味にプラチナ本を攻めていこう。
自分の県の地名すら怪しい私ですので、東京のことなどさっぱりさ!と胸を張って断言しておこう。よし、予防線は張った。
時代は、江戸から現代(たぶん昭和?)にかけて。あまり読まないタイプの本だったので、戸惑いながらのスタートとなりました。でも、最後まで読むと連作短編らしく各話につながりがあって、なるほど~という感じでした。ざっと感想を!
「染井の桜」。ソメイヨシノにこんなエピソードがあったらステキだな、と思った。徳造の生き方は清いと思うけれど、私にはこんな人の嫁はつとまりそうに無い。
「黒焼道話」まず黒焼って?という疑問が。彼の情熱は素晴らしいが、方向性を誤ったー!彼が真面目に黒焼の道を究めんとする姿が、あまりに滑稽でおもしろいやら悲しいやら。
「茗荷谷の猫」夫婦とはなんぞや?という話を語るには、私の経験値は足りなさ過ぎる。ただ、自然消滅は悲しい。床下に潜んでいた何かと一緒に、彼女の迷いも無くなれば良いのに。
「仲之町の大入道」松原と編集者のやり取りがおもしろい。春造は、今でも黒焼を作っているのかしらん・・・。
「隠れる」糸蚯蚓夫人!笑。たぶん、この本の中で一番コミカルな作品だと思う。嫌われようとすればするほど、気に入られてしまう展開がおもしろい。そして最後のオチも素晴らしい!
「庄助さん」戦時中。後半うるっときてしまいました。青年たちの夢や希望を犠牲にして、戦争は続いていたんだ。戦争ってそれほどの意味があるものだったのか?少なくとも、若人の未来より重要なモンではなかったことは確かだ。文枝さんの元・旦那さんの姿の消し方はずるいと思うの。
「ぽけっとの、深く」戦後。本編よりも、庄助さんが戦死したことに衝撃を受けた。復員して、映画を撮って欲しかった・・・。
「てのひら」親の老いを受け止めるのは大変だと思う。親に説教をするようにはなりたくない。いつだって、叱られる側でいたい。
「スペインタイルの家」高度経済成長期。あの靴磨きをしていた俊男くんが所帯を持っていたなんて・・・!と嬉しくなった。ゆったりとした物語の流れが安心感を誘う。しかしこの後、パチンと泡がはじけるのかと思うと、恐ろしいですねえ・・・。
思ったより猫成分が少なめだったのが残念といえば残念!


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