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読書の記録です。

「南極(人)」

京極夏彦/集英社

笑撃のおすもうさん小説『どすこい(仮)』から8年。再び、小説の常識を打ち破るスラップスティック・ギャグ小説が登場!

このミス2010年版の、今年発売されたミステリ本が収録されているところに、この本が載ってまして・・・。・・・このカテゴライズで良いの?という感じのアホっぷりを発揮している一冊です。パロディなのは言わずもがな。コラボなんかもやっちゃってます。京極さん、楽しそうだなあ。
前編「南極探検隊」では、南極夏彦と彼を取り巻く面々がオカルトに立ち向かって?います。この売れない作家・南極は56歳の通称・簾禿げ。ちびでデブで寝汗はすごいわ、汚いわ、臭うわ、バカでアホと、人間のありとあらゆる負の特徴を寄せ集めたかのようなおっさん。話は、もう一人の売れない作家・赤垣廉太郎が、超凶暴な女編集者・椎塚有美子の企画に振り回されるところから始まるのですが、最終的には、南極が出てきて、ふっとばされて終わってるような感じ。
「海で乾いていろ!」心霊写真の回。ウミウシの腹みたいな顔ってどんなのだ!?中大岡と無田和尚のエセ霊能者がおもしろかった。
「宍道湖鮫」UMA。U・M・A。ウ・マ。うま。馬。なんじゃこのオチー!ダジャレ!?
「夜尿中」題名といい、法繞寺(ほうにょうじ)といい、この展開は予想していたけれど、こんなに臭い漂うオチだとは・・・。しかし、聖骸布ネタは好きだったりします。
「ぬらりひょんの褌」こち亀とのコラボ。私、原作が未読なもんで両さんがいかなる人物か存じ上げないのですが、幼少時からこんなゴキブリ並みの生命力を備えているなんて、ただものではないですね・・・!
後編「帰ってきた南極探検隊」は、10年後のお話になります。大盛望が売れっ子書評家になっています。書評家に売れっ子とかあるのか。あと、有美子が編集長になってます。それ以外の愉快な仲間たちも相変わらず元気な様子。
「ガスノート」このノートに名前を書かれた者は、必ず放屁する。・・・お、おそろしやー。
「探偵がリレーを・・・」く、苦しいっ!展開やオチに無理を感じましたが、干菓子野ケーキ先生が楽しそうだったのでよしとしよう。
「毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る」おっと、泥沼にはまったか!?まさかこれをパロディのネタとして持ってくるとは・・・。その心意気に完敗だぜ。ちなみに、毒マッスル海胆っていうは、巨大除霊ウニのことなんですよ。そいつがね、米糠をね、食べるんですよねえ。何の話でしょうねえ。
「巷説ギャグ物語」こちらは、赤塚不二夫作品とのコラボ。小説と漫画の世界について、登場人物が思索するという、メタな雰囲気が流れています。ある意味、一番真面目な作品ではないかと思います。ウナギイヌが出てこなかった・・・。しょんぼり。
いやー、長かった。これだけ長いのに、本当にバカなことしかやってない小説もなかなか無いよ、きっと。ぷすっ、と笑いたい人にオススメ。


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