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読書の記録です。

「ブラザー・サン シスター・ムーン」

恩田陸/河出書房新社

ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを。本と映画と音楽…それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生。

恩田さんの得意技のひとつに、「何でもないことを、なんだかよくわからないけど、ものすごく勿体つけて語って雰囲気を出す」があると思います。要約すると、話は3行で終了、みたいな感じ。これがそうなんですけど。課外授業で訪れた謎の町とか、ヘビの話なんか何のオチもないですよねえ。そもそも、この本自体がオチなしという・・・。ふくらし粉で一冊できあがっちゃった感があります。そんな話。
高校時代の課外授業がきっかけで、よくつるむようになった男女3人が、高校~大学時代を回想する話。紅一点、楡崎綾音は現在小説家(たぶん)。戸崎衛はメーカーに勤める会社員。箱崎一は映画監督。大学生活の4年間とは、一体自分にとってどのような意味を持っているのか・・・。別々の人生を歩んでいる彼らが、共通の出来事を色々な視点で捉えているところがおもしろいなあと思った。特に、綾音の淡白さに。衛も一も綾音のことが好きで、ちょっと当時の気持ちを引きずっているところがあるんだけど、綾音はもう昔何かあったな~程度。一に関してはノータッチ。笑。この女の残酷な冷たさが私は好きよ!
大学時代、一度も3人で会わなかったというところは、ちょっと変な三角関係が関係しているのかなあと思った。ハコちゃんの奥さんは、綾音かなーと一瞬思ったのですが、現在の勤め先は金融関係ではないし、綾音が前の職場にいた時に彼女を介して知り合ったのか、それとも全く別ルートか・・・。なぜこんなに考えているのか・・・。それが一番謎だ・・・。
1人の人生を道に例えるならば、それは寄り添うことはあっても、重なることはない、のだなあ。


「私たちは、別れるために出会ったのね」





題名から、映画よりも「太陽とシスコムーン」を連想してしまうあたり、芸術性のカケラもない自分にがっかり・・・。
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