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読書の記録です。

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「ファミリーポートレイト」

桜庭一樹/講談社

あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。呪いのように。親子、だもの。ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。

血の呪いと書いて家族と読む。そんな話。
コマコにとってマコは全てであり、彼女の世界の神のような存在。かなり屈折していますが、「私の男」で描かれた親子関係よりは、まだ許せるかなあ。なんだかんだで、母親は娘を大事に思っていたんじゃないかなあと思うので。母親の影響は、彼女がいなくなってからもコマコを長い間束縛します。傍から見れば束縛なんですが、コマコにとっては幸せな思い出で、それが他人と親子の違いかしら、と思った。
物語は、マコとコマコの逃避行・コマコの幼少時を描いた「ファミリーポートレイト」とマコの死後・コマコの思春期~妊娠までを描いた「セルフポートレイト」の2部から成っています。母親は付き合っていた男を殺し、コマコ(駒子)を連れて逃亡。あちこち転々とするけれど、駒子の父親に見つかったため池に飛び込み失踪。死体はあがっておらず、生死は不明。その後、父親に引き取られた駒子は、家に寄り付かず学校で寝泊りし、卒業してからは文壇バーで暮らす。幼少の頃から、物語の世界に魅せられていた駒子は、自分で物語を語るようになり、ある新人賞に選ばれ作家としての人生を歩む。5歳から34歳までの波乱万丈すぎる半生。
あんた、よく生きていたなあと。そんな感慨を感じるほど危なっかしかった。酔っ払いが崖っぷちをふらふら歩いているような感じ。作家の極限状態は、ただすごいなあと感心するばかりでした。ものを産み落とす作業って、本当に身を削るようなものなんだ。
夜は床でとぐろを巻くようにしか眠れず、恋人に抱きしめられて過ごす夜は落ち着かない。真田が彼女を一生懸命諭す姿は、いいなあと思いました。駒子はずっと本質はコマコのままなのだろうけど、2人が歩み寄って妥協点を探しながら一緒になったのは意外であり、うらやましくもありました。理想的。
最後に、「いろいろ大丈夫。愛することとか。」と言う駒子は、きっと本当に大丈夫なんだと思った。


「狼煙を上げろ。」

「神さまに届くぐらい。高く、高くにだ。」

「地獄の底から叫ぶのだ。」


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