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読書の記録です。

「ゴールデンスランバー」

伊坂幸太郎/新潮社

仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に呼び出されていた。森田は青柳に「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた・・・。

仙台を2、3日逃げる話。
それだけではなく、恐い話だった。
前からマスメディアは無責任で恐い存在だなあと思っていた。昨日もてはやしていた人を、今日中傷することだって平気でやる。自分じゃどうしようもできない、大きな力。その恐ろしさ。なぜ自分が?と何度も自問しても答えが出ない。青柳が巻き込まれる出来事のひとつひとつが、本当に理不尽だと思った。
映画では、堺雅人さんが青柳役を演じていましたが、原作を読んで「なるほど~」と納得。イケメンで優しくて、線が細い。しかしやる時はやる!笑顔で人を斬れそうな堺さんに適役ではないですか~。そんな彼が私は大好きですよー。
世間が青柳を犯人だと名指ししても、仲間と家族は信じてくれた。何年も会っていなくても、自分を信じて助けてくれる仲間っていいなあと思った。そう、たぶん伊坂さんはそういうアツイものをたくさん小説に注ぎ込んでいたのだと思う。時々織り込まれる過去のエピソードと、現在の時間がシンクロして、伊坂さんの小技が効いてるなあと感心しました。うまい!
最後は・・・、ある意味負けた感があるのは否定できませんねえ。そもそも、青柳を首相暗殺の犯人に仕立て上げた敵を国家、と仮定しても、その国家が漠然としていて、一体何と戦っているのかという気分になります。逃げ切ることが勝利なんでしょうけど、せっかくのイケメンが・・・。それが一番残念だなあ・・・。


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