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読書の記録です。

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「鷺と雪」

北村薫/文藝春秋

帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ。

直木賞受賞作。ベッキーさんシリーズは、本格ミステリで1作読んだことがあるだけ。北村作品は、昔「盤上の敵」「スキップ」「ターン」「リセット」を読んだのですが・・・。おもしろい、というよりは、上品なミステリという印象で、あんまり合わなかったんですよねえ。いろいろ気になるのはあるんですけど。「六の宮の姫君」とか。
お嬢様・英子さんとお付の運転手・別宮さん(通称ベッキーさん)が、昭和の時代に暮らす人々のちょっとした謎を解いてゆきます。前作から引き続いて登場する人たちが結構いまして。そこは読んどけば良かったなあーと思いました。とにかく、時代背景の描写が細かく、本当に見てきたんじゃないっすか?くらいのリアルさでした。史実なんかが上手く盛り込まれているのもさすが。
「不在の父」では、家柄の違い、夫婦の溝から失踪してしまった人の話。爵位なんて今ではあって無いようなもんですよねえ。さりげなく玄関から出て行ったというトリックには納得。「獅子と地下鉄」は、そんな迷信がー!とびっくり。とにかくこの話はベッキーさんのかっこ良さにしびれました。ビリビリ。「鷺と雪」当時のカメラだからできたトリック。こう見ると、デジカメって味気ないですね・・・。と言いつつ、デジタル一眼を狙っている私。ニ・ニ六事件といえば、「蒲生邸事件」(宮部みゆき)を思い出します。最後はこう来ると思っていなかったので、びっくりしました。時代が違っていたら、もしかしたら、英子と若月さんの間で何かが始まっていたかもしれないのに、と思うと切ないエンディングでした。
そして、やはり北村さんは甘い味付けを忘れない人なのです。昭和の時代にあっても!笑。お兄ちゃんもがチャーミングでおもしろい。
とても上品で深いミステリでした。そしてちょっぴり哀しい。


「何事も―――――お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」


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