「Yの悲劇」
狂気じみたハッター家の当主の死体がニューヨークの港から発見され、その後一族の中で次々と奇怪な惨劇が起こる。サム警視の依頼を受け、ドルリイ・レーンはその恐るべき完全犯罪の意外きわまる真相を解き明かそうとするが……犯罪の異常性、用意周到な伏線、明晰な推理。本格ミステリ不朽の名作。
エラリイ・クイーンは、2人だった!
フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーという従兄弟同士のユダヤ系アメリカ人の合同ペンネームだそうです。(あとがきより)確かに、写真にはおじさんが2人写っている!またひとつ、賢くなりました。恥をかく前で良かった~。
「X・Y・Zの悲劇」に「ドルリイ・レーン最後の事件」を加えて、悲劇四部作と呼んでいるそうです。題名は良く目にしますが、あらすじまでは知りませんでした。Yさんが殺されるのかしら~ってイメージでした。
「Xの悲劇」で事件を解決した探偵・ドルリイ・レーン氏は、警察から再び事件の捜査を依頼されます。事件の舞台となったハッター家は、「気ちがいハッター」と呼ばれ、常軌を逸した行動の多いことで有名な一族。2ヶ月前にこのハッター家の夫(ヨーク・ハッター)が自殺していたのだが、次はその夫人(エミリー・ハッター)が自宅で殺された。凶器は、ヨークのコレクションのマンドリン?また、前夫との間の娘・ルイザ・ハッターを狙った毒物混入事件も起きている。エミリー殺害時に、同じ部屋で寝起きしていたルイザは、重要な証人だが彼女は先天的に視力・聴力を失っており、喋ることができなかった。捜査が続けられるなか、ヨークの実験室が放火される。・・・犯人は誰か!?っていう話でした。
とにかく、探偵のレーン氏が、煮・え・き・ら・な・い!もー、引っ張る、引っ張る。笑。すぐ言えよ!今言えよ!ここで言えよ!と何回思ったか。結果として、犯人は自分で仕込んだ毒を誤って飲んで死んでしまうんですけどね・・・。レーン氏は善意で、犯人に更正のチャンスを与えたつもりだったのかもしれないですけど、そんな他人を裁くような権限、探偵にはないと思います。ただ真相を暴くのみ。あとは司法に委ねて下さい。まあ、こんな感じでレーン氏、手際悪い~。いまいち~って感じでしたけど、謎解きのアプローチはなるほど!と思いました。読者に対してフェアです。
特に、犯人への背丈からのアプローチ。ルイザの証言で材料はほとんど揃っていたっていう。あとは、マンドリンについて。blunt instrument(鈍器)の意味が分からず、instrumentつながりで、musical instrument(楽器)を連想し、マンドリンへと結びついたという発想の飛躍。これは、なかなか思いつきません。
ただ、犯人が善悪の判断がつかないまま、犯罪を遂行していくところは動機としてどうだろう?と思います・・・。遺伝と言われれば、もうどうしようもないですけどね。そもそも、ハッター家のみなさんの異常性は、エミリーが原因と言われています。作中では詳しい原因について触れられていませんが、あとがきで梅毒というキーワードが出ていたので、ちょっと調べてみました。(梅毒で神経の異常まで起こるのか?という疑問があったため)
梅毒は、感染すると痛みのないしこりができたり、太もものつけねが腫れたりします(第1期)。その後、全身に菌が広がり(第2期)、最終的には心臓、血管、目、神経などに重度の障害が出るそうです(第4期)。現在は末期の患者は稀だそうですが、可能性としてはあり得るということですね。納得。検査ではワッセルマン反応で陽性が出るそうで、ハッター一族のカルテにも書かれていたっけな~。これも納得。第2期にはバラ疹と呼ばれる発疹が全身に現れるそうで、ヨークが生前、腕の発疹に薬を塗っていたけど、これも病気によるものだったのかなーと思ったり。勉強になりました。
最後まで、「ドルレイ・リーン・・・あっ、ドルリイ・レーン・・・」っていう状態でした。ドルレイ・リーンの方が読みやすくないですか?
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