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読書の記録です。

「ジェノサイド」

高野和明/角川書店

創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、急死した父親の遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、「人類全体に奉仕する」作戦に参加することになる。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入する。

「野生時代」で途中まで読んでいたのですが、そういや結末はどうなったのかな~と思い、読んでみることにしました。そういえば、何年か前の「このミス」で1位をとってましたね。私の印象では、SFかサスペンスというイメージだったので、このランキングを参考にミステリーだと思って読んだら、騙された気分にならないかなあと思ってました。まあ、その時はイエーガー達が、コンゴの脱出を開始したあたりだったので、その後なんかあったのかな、と。最後まで読んでみて・・・、やっぱりこれはミステリーじゃないなあ、というのが私の感想です。ハイズマン博士からルーベンスへの謎かけをミステリーとしてみることも可能ですが・・・。でもやっぱりSFだよな・・・。
物語の主軸は3ヶ所。日本の古賀研人(薬担当)、コンゴのイエーガー(新人類担当)、アメリカのルーベンス(アメリカの内政担当)の3者が物語を展開していきます。とにかく展開がスピーディで、本の分厚さを感じさせないです。映画を観てるような感覚が近いです。題名の「ジェノサイド」の意味は大量殺戮。人だけが、同種族の中で大量殺戮を行うのだそうです。そんな人類がさらに進化し、新人類が誕生した!将来的には、現在の人類は淘汰され、新人類が生き残るだろう。事態を重く見たアメリカ政府は、新人類の抹殺計画を実行に移す。新人類も黙ってなくて、コンゴから脱出するために自分を殺しに来たはずの衛兵を味方につける。そのために、日本の古賀親子に薬を作るためのソフトを与える。そして、その薬をエサに難病の息子を持つイエーガーを仲間に取り込んだのだ。
こうやって見ると、新人類おそろしいですね・・・。自分が日本に行くために、勧誘しやすいターゲットが候補に挙がるまで、候補者を殺し続けるし・・・。将来、新人類が大多数を占める世の中になったとしても、また争いが起きるんじゃないかなあとは思います。だって、今ですらこんな悪知恵が働くんだぜ?成長したら、すごい策士になりそう。
ミックの扱いがちょっとひっかかったんですが・・・。日本人をそこまで悪者にしないでも・・・。ミック、最後まで最悪な人でした。日本人の中でも、あそこまで凶暴性むき出しなのは珍しいと思うんだけどなあ。韓国との話とか、話の流れとかみ合っておらず、思想の部分では?となりました。ジョンフンはいい人だと思うけど、それを強調するために伯父さんのエピソードを持ってくるのは、どうなんでしょう?
創薬のパートは、うまくいきすぎ感がものすごいですが、うまくいかないと話が盛り上がらないわけで。笑。でも、実際研究ってそんな簡単にいかないよね。渦中のSTAP細胞も、もし、本当にあったらそれは素晴らしいことだけど、ips細胞ですら適用がまだ角膜など一部に留まっていることから見れば、人間の体は本当に奇跡で、そんな簡単に切ったり貼ったり増やしたりできるもんじゃないんだなと思います。でも、挑戦し続ける科学者のスピリットが素晴らしいです!話が混ざっちゃったけど、研人君の目標がクリアになって、お父さんへのわだかまりが無くなったのは良かった。できれば生きてる間にわかりあえたら良かったのにね。
人類はゆるやかに衰退の一途を辿るだけ・・・。という展開は残念です。人間もそんなに捨てたもんではないと思うのですが・・・。


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