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読書の記録です。

「シャーロック・ホームズたちの冒険」

田中啓文/東京創元社

シャーロック・ホームズ&アルセーヌ・ルパン、ミステリ界が誇る両巨頭の新たなる冒険譚。赤穂浪士討ちいりのさなか吉良邸で起こった雪の密室殺人。あのアドルフ・ヒトラーがじつは大変なシャーロキアンだったら・・・。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本に来た本当の理由とは。著名人の名推理に酔いしれる、連作短編集。

オマージュ、ではなくパスティーシュ。違いが良くわかってないんですが、パロディ寄りってことでいいのかな・・・。
「“スマトラの大ネズミ”事件」シャーロック・ホームズの巻。ワトソンの遺稿の中に発表が伏せられていたものがあった!ホームズの名誉に関わる話なので、関係者の死後まで発表は見合わせて欲しいという、ワトソンの要望があったためだという。一体、原稿には何が書かれていたのか・・・。
このトリック、どっかで読んだ記憶があるのですが、全く思い出せない。初出は知らないし。寄生した宿主の姿を模写する虫(正確には、虫が体液を出して背中に顔を描き出す)を使ったトリックなんてそうそうないと思うんだけど。笑。首の断面から足が生えてたっていう描写、どっかで読んだんだよなあ。そうそう、肝心のオチはホームズとの対決で、滝つぼに落っこちて死んだと思われたモリアーティ教授が、ゾンビとして生き返っていたという・・・。実はホームズも・・・!
「忠臣蔵の密室」大石内蔵助の巻。日本人は何故か好きな忠臣蔵。私なんかは浅野内匠頭がもうちょっと我慢したら良かったのにね、って思っちゃうクチです。赤穂四十七士が吉良邸へ討ち入ったとき、すでに吉良上野介は何者かに殺されていた!
探偵役は、大石内蔵助の妻・りく。息子から、吉良を殺したのは実は自分達ではない旨の手紙を受け取ったりくは、真相の解明に乗り出す。そんなことかー、と思ってしまったのですが・・・。
吉良じいさん女中に手を出す→キレた女中の逆襲によりじいさん殺される→父ちゃんを殺された息子がキレる→女中袈裟切り→慌てる側近→そういや大石の一味が討ち入りの計画立ててるって!→じゃあ、大石の奴らに殺されたことにしちゃえばいーじゃん!
・・・意外に、本筋よりおもしろいかもしれない。
「名探偵ヒトラー」ヒトラーの巻。ヒトラーが実はシャーロキアンだった!というある意味この中で一番ありえない設定。私の中でヒトラーは独善的で残忍な印象なので、微笑むヒトラーとか最初は違和感がありましたが、最後のブラックさは彼のイメージ通りでした。
ヒトラーの執務室には、ロンギヌスの槍が飾られている。公に展示されているものは偽物でこの部屋にあるのが本物なのだ。しかし、ある日光る怪人の急襲を受け、ロンギヌスの槍は奪われてしまう。
もともと槍は偽物で、しかも穂先だけだったので引き出しにささっと隠したっていう・・・。ボルマンの背中に蛍光塗料で描かれたのが怪人だったっていう・・・。トリックはあれっ?て感じでした。それより、口封じのためにどんどん人が殺されていくのに恐怖を覚える。
「八雲が来た理由」小泉八雲の巻。松江で小泉八雲が遭遇した不思議な出来事3本立て!
ろくろ首と耳なし芳一にのっぺらぼうです。
ろくろ首の印象があまりなく、いつの時代もバカな男がいるもんだと思った。耳なし芳一は、八雲をはめるための寺側の自作自演で、芳一さん耳持ってかれなくて良かった~と安心。のっぺらぼうは・・・。お坊さんの頭って剃髪してても、肌色じゃなくてグレーに見えません?果たして顔に見えるのか、実験してみたいです。笑。カバンにつめられたミイラは怖いですね。お母さん思いの優しい(ちょっと壊れた?)八雲さんだったというオチできれいにまとまりました。
「mとd」アルセーヌ・ルパンの巻。これは何やねん!と。ルパンもホームズも変装得意ですけど、まさか同一人物とは・・・。えっと、モーリス・ルブランも同じ人だとしたら・・・、めっちゃ忙しい人じゃないですか!っていうか、変態じゃないですか!笑。
今回のルパンのターゲットは宝石。凶暴なミミズクの足にくくりつけられており、盗むのは不可能。・・・なはずなのですが、その後、少女の石像が見つかった場所へ行って、実は少女は昔ルパンと恋仲だったとわかり、そこからヒントを得たルパンは再び戻ってきて、ミミズクと対決!一瞬で石化する毒によってミミズクは石になりましたとさ。・・・正直、対決シーンは呆気にとられてました。一体なにが起こったのか・・・。笑。最後に同一人物ネタをぶち込まれたので、私的にこの本の中で一番迷走した話になりました。
ちなみに、“mとd”とはヒエログリフの対応文字で“m”は“フクロウ”を、“d”は“コブラ”を意味するそうです。なるほど。


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