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読書の記録です。

「七夜物語」

川上弘美/朝日新聞出版

小学校四年生のさよは、母親と二人暮らし。ある日、図書館で出会った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は。

一応ジャンルは児童文学ですが、小学校の高学年くらいの子が読むといいんじゃないかなーという感触です。もちろん、児童文学が好きな大人も楽しめると思います。
夜の世界というイメージから、寝てる時に違う世界へ行くのかなあと思っていたら違いました。昼間に突然迷い込むけど、実際は時間が経ってないというパターン。
物語の主人公は、さよと仄田くん。小学校4年生。2人は同じクラスだったけど、特に仲良しというわけではない(むしろ仄田くんはクラスから浮いていた)。しかし、一緒に夜の世界の冒険をすることになり、協力するうちに相手のいい所も悪い所も知って、絆を深めてゆく。
一番最初の夜は、大ねずみのおばちゃん・グリクレルが登場。最初は、悪者?いじわる?と思っていたけど、いいねずみさんでした。自分のことは自分でやろう。お母さんをお手伝いしましょう!という冒険のイントロ。自分はお手伝いとかしない子だったので、仄田くんは普通じゃん!と思っていた。
二番目の夜は、誘惑の夜。霧の中を歩き続けて、不思議な家に辿りついた2人。その部屋のこたつは大層気持ちが良くて、猛烈な睡魔に襲われる。私はここでゲームオーバーになりそうです。笑。三番目と四番目の夜では、それぞれの内面と向き合うことになる。さよの若い頃の両親が出てきてチュッチュし始めた時は、「ど、どうした!?」と戸惑ってしまった。まあキスしてるだけなんですけど、なんていうか・・・ラブシーンだ!って感じで(←思春期か。笑)。五番目の夜では、学校を危機から救います。モノと生き物は違うのか?モノが動いて、生き物が動かなくなる世界だってありえるのではないか?このあたりちょっと中だるみでした。ウバの「ぼおおおっ」に何故か和む。
六番目の夜はパーティー。パーティーはファンタジーの醍醐味ですよね!ねずみも子供もモノたちも、架空の生き物も、みんなが同じものを食べて楽しくおしゃべりして。これが平和ってことなのかもしれない。そして最後の夜。楽しかった反動で、一番辛くてしんどい戦い。実は七夜物語の世界は、少しずつ歪んできていて、グリクレルにその歪みを直して欲しいと頼まれる。光と影の子供たちは言う。現実の世界と夜の世界は互いに影響し合っていて、こちらが歪んでいるのはお前達が変わったからだと。光と闇、善と悪、なんでもきれいに分かれているほうがいいに決まっている。どっちも受け入れるなんて、そんなのはおかしいと。絶対絶命のその時、遠くから聞こえてきたのは、口笛の命の歌だった。
今までのペアがそうだったように、さよと仄田くんの絆も、夜の世界の冒険が終わってもずっと続くと思っていた。だから、最後はちょっと寂しかったな。でも、その人を思い出すと優しい気持ちになれる、そういうつながりも素敵だなと思った。
酒井駒子さんの挿絵目当てで読んだようなもんですが、子供向けにありがちな友情、勇気、冒険!だけではない深いテーマが織り込まれていて、楽しめました。


「いいところも、へんなところも、まじりあってでこぼこで。」

「そういうものが、すてきなんだよ。」


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