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読書の記録です。

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「残り全部バケーション」

伊坂幸太郎/集英社

離婚する夫婦とその一人娘が、ひょんなことから「岡田」と名乗る若い男性とドライブに行くことに。男の素性がつかめないまま、起こった出来事とは(「残り全部バケーション」)他5編、裏稼業コンビ・溝口&岡田の物語。

「夜の国のクーパー」では、ボロクソな感想をアップしました。で、伊坂作品から距離を置くか、読むか、試金石のつもりで手にとってみました。まあ、私の「読む」って、いつか読むとか気が向いたら読むとか、ゆるゆるなんですけどね。笑。
裏稼業って言ってますけど、実際は当たりやとかチンピラみたいな感じのコンビ。先輩の溝口と後輩の岡田が主人公です。
「残り全部バケーション」一家離散前日の家族の父親に、出会い系のメールが届いた。「お友達になりませんか?」かくして、お友達になった父一家と岡田はドライブに出かける。良い子はこんなメールにお返事を出しちゃダメ!という展開。あっけらかんとした終わり方ですが、実は結構深刻な事態だったんだなーと後になって気付く。本人にとっては秘密の告白が、実は秘密でもなんでもなくて、周知の事実だったというところが好きです。「そんなのとっくに知ってるよ!」っていう。
「タキオン作戦」路上で見かけた小学生に虐待の痕を見つけた2人。岡田は小学生の父親にある作戦を仕掛ける。「オレは未来から来た何十年後かのお前だ」と言われて信じる人がいるのか・・・。は置いておいて、岡田のおせっかいぶりが裏稼業ぽくなくて、転職を考える気持ちがわかるわーと思った。いい子だね、岡田くん。
「検問」拉致された女を乗せた車が検問を通過する。車のトランクには大金の入ったボストンバッグがあった。検問での見落とし?故意か?札束を前に3人は考える・・・。ミステリーとしてもおもしろかった作品。岡田ではなく、太田というお菓子大好きな男が舎弟として登場。あれ?岡田は?あっ、そうか、足を洗ったのか・・・。・・・あの後、どうなったの?とちょっと不安になる。それにしても、溝口さんの根拠のない自信(本人には根拠があるのかもしれない)はどこからくるのか。私も、お金、欲しいっす・・・。
「小さな兵隊」僕の同級生の岡田くんはちょっと変わったヤツだ。ある日、岡田くんの行動の本当の意味がわかったとき、僕と岡田くんは悪いやつと対決することになる。「お父さんがスパイ」と紹介?されていた岡田くんの同級生の話。監督になった彼にインタビューするのは・・・。いよいよ雲行きが怪しくなってきた岡田くんの行方。話とは全然関係ないんですけど、学校の女性教師って憧れフィルターがかかって、美人で清楚で優しくて時々怒ってもあんまり怖くなくて・・・みたいな描かれ方をしていることが多いけど、実際にそんな先生にお目にかかったことがない。
「飛べても8分」仕事中に交通事故に遭い、入院することになった溝口。同時期に、溝口たちチンピラの元締めである毒島に脅迫状が届く。なんと、脅迫状を送ってきたのは、溝口の交通事故の相手だった。この時点で、岡田はどうなったんだー!と悶えていたのですが、まあ消されちゃったんだろうなと諦め80%くらいでした。伊坂さんって、そういうとこ容赦なさそう。舎弟は3人目の高田くんにチェンジ・・・したけど、太田くんも意外なところで登場。仇を取るぐらいなら、最初から濡れ衣着せるなよ!とツッコミたくなったけど、この矛盾も溝口らしさなんだろうなあ。
最後には色々な見解があり、どの説でも解釈できるような終わり方でした。個人的には、岡田も溝口も(もしかしたら、とばっちりで高田も?)毒島さんにやられちゃったんじゃないかなーと思います。残酷ですが、一番現実的であり、残酷な現実もポップに表現してしまうのが伊坂さんの魅力かなと思うので・・・。
ブログを覗き見しても、「こういうのが読みたかった!」とスッキリしておられる方が多いようです。私もスッキリしました。笑。今まで通り、伊坂さんの作品もチェックしていこうと思います。


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