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読書の記録です。

「レディ・ジョーカー」

高村薫/毎日新聞社

「要求は20億。人質は350万キロリットルのビールだ。金が支払われない場合、人質は死ぬ。話は以上だ。」日之出麦酒を狙った未曽有の企業テロはなぜ起こったのか。いま、人間存在の深淵を覗く、前人未到の物語が始まる。

久しぶりの社会派。
男たちの生き様がかっこ良かった。仕事=男だとは思わないけれど、やはりこの物語は、男性メインでなければここまで熱くならなかったと思います。犯人達も、金銭が目的ではなくて、自分の存在意義を問いかけているような哀愁が漂っています。ただ、それで企業恐喝というのは、ただのひがみか逆恨みでは?と思わなくもない。城山だって、それなりの努力で成功しているわけですし。ううむ。
下巻から、事件は2転3転の展開を見せます。次はどうなるのか、非常にはらはらしました。事件の間、犯人側の視点が語られないので、実は第3の集団の犯行だったりしてーと深読みしてしまいましたが、その辺りは正統派の物語の流れでした。いやー、良かった良かった。
後半の半田と合田の心理はちょっと理解できなかったんですが・・・。っていうか、お義兄さん!?あなたの気持ちに、私、全然気がつかなかったよ!引いちゃったよ!
最後に、トマトを抱えながら畑を駆けるヨウちゃんの姿を思い浮かべて、なぜだか胸がいっぱいになりました。
高村さんの作品は有名で、題名は良く聞いていて知っていたのですが、本のぶっとさ故に手が出せずにいました。やはり読了には時間がかかりましたが、すっごくおもしろかった!他の本にも手が伸びそうな勢いです。


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