忍者ブログ
読書の記録です。

「さいごの毛布」

近藤史恵/KADOKAWA

幼い頃から自分に自信が持てず、引っ込み思案。家族とも折り合いが悪く就職活動も失敗続きだった智美は、友人の紹介で、事情があって飼い主とは暮らせなくなった犬を有料で預かる老犬ホームに勤めることになる。時には身勝手とも思える理由で犬を預ける飼い主たちの真実を目の当たりにして複雑な思いを抱く智美は、犬たちの姿に自らの孤独を重ねていく。

「ペットのアンソロジー」で、すっかり犬にはまってしまったと書かれていたので、動物をテーマにした作品が増えていきそうですね~。
私は犬が大好きで、飼っていた犬が亡くなってからは動物全般が好きです。しかし、「動物の死」となると、おいおい泣いてしまうので、「死」が出てきそうな本は自然と避けているかもしれません(人が殺される話は平気なのに。むしろ好物)。今回も迷いました・・・。でも、飼い主と犬の高齢化が進む現代で、老犬ホームは大事なテーマなので!
主人公は、人付き合いが苦手な智美。家族からも「何を考えているのかわからない」と言われ、孤立しているため実家にも寄り付かない。友人からの紹介で老犬ホーム「ブランケット」で住み込みで働くことになった智美。犬を飼ったこともなく、専門的な知識もない。突発的な出来事に対処するのが苦手な智美だが、オーナーの麻耶子や同僚の碧に助けられて仕事に慣れていく。最初はわからなかった犬たちと飼い主の関係。麻耶子や碧の人間関係。そして自分の家族との関係を見つめなおす。
人生それぞれ。事情もそれぞれ。保健所に連れていくくらいなら、老犬ホームに入れるという選択があってもいいかなあとは思います。でも、大事な家族は最後までちゃんと看取ってあげて欲しい。「子供に死ぬところを見せたくない」という飼い主が一番ひどい。本当にこんな人がいたら軽蔑します。他にも、病気でやむを得なく、仕事の事情で・・・などなど。無責任な人間ではありますが、同時に大事なお客様。いちいち腹を立てていては商売にならない。麻耶子さんが言うように、ペットビジネスは「好きなだけでは務まらない」のです。
老犬の世話は、あんまり大変なことは書かれていなかったけど、実際大変なんだろうなと思います。タヌ吉みたいに愛想のいい犬ばかりではないだろうし。当然ながら病死するワンちゃんもいて、そのシーンではほろりときました。
私が思っていたよりも、人間達の物語にウエイトが置かれていて、特に碧さんの不倫の行方は気になりました。きれいで気さくな碧でも、上手くいかないことがある。世の中を泳ぐのがしんどいのは自分だけだと思っていたけど、意外とみんなしんどいのかな・・・と智美が考える場面では、そうそうと思いました。その碧も泥沼不倫から抜け出せそうで良かった。麻耶子さんも、息子と仲直りできそうだし、智美も家族との距離が少し縮まりそうだ。
全てを手に入れることはできなくても、ひとつずつ拾えそうなものを拾っていく。そういう生き方もありだよね。


PR