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読書の記録です。

「死と砂時計」

鳥飼否宇/東京創元社

世界各国から集められた死刑囚を収容する、ジャリーミスタン終末監獄。親殺しの罪で収監されたアラン青年は、“監獄の牢名主”と呼ばれる老人シュルツと出会う。明晰な頭脳を持つシュルツの助手となって、監獄内の事件の捜査に携わるアラン。死刑囚の青年と老人が遭遇する、摩訶不思議な事件の数々。

久しぶりに鳥飼さんの本を読みました~。
舞台は監獄。被害者も犯人も監獄の中!という特殊な状況での殺人事件です。主人公は親殺しの罪で死刑となったアラン。彼はジャリーミスタン終末監獄に送られる。そこで不可解な事件が起こり、アランは監獄の長老・シュルツの助手となり事件を捜査することになるのです。
「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」死刑の執行日が決定した2人の確定囚が、独房の中で殺された。ほっといても殺される2人を何故わざわざ殺す必要があったのか・・・。びっくり人間にだけ可能なトリック!しかも絶対にフルヌードにならなければならないという・・・!なんてハードルの高い犯罪なんだ・・・。
「英雄チェン・ウェイツの失踪」海外で天才詐欺師が脱獄して、気が済んだから戻ってきました・・・みたいなニュースを見ましたが、このお話で脱獄したチェンも実は戻ってきていたというオチ。ジャリーミスタン終末監獄では、囚人にチップを埋め込んで管理しており、立ち入り禁止区域に入るとものすごい電流が流れる仕組みになっています。そのため脱獄は不可能と思われていたのですが、チェンは見事脱獄に成功します。体格のいい看守をおもりにして・・・というのは想像がつきましたが、チップの埋め込んであるところにはびっくりでした。目玉をえぐり出さないといけないんだぜ?
「監察官ジェマイヤ・カートレッドの韜晦」これは印象に残ってないなあ。なんか人騒がせだなと思ったような・・・。要は自殺ですよね?
「墓守ラクバ・ギャルポの誉れ」死体の埋葬を引き受けていたギャルポ。しかし、彼が墓を掘り返し、死体を食べているのではないかという疑惑が浮上する。ただの宗教観の違いだったんだけど、ギャルポがジャリーミスタン語を理解できなかったため、コミュニケーションが成り立たず事態を複雑化してしまった。土葬も鳥葬もいやです。火葬して欲しいです・・・。
「女囚人マリア・スコフォールドの懐胎」女性の囚人が獄中で妊娠したらしい。彼女が収監されてから13ヶ月が経っているので、収監される前の妊娠とは考えられない。謎を解くためシュルツとアランは女囚が収用されているエリアへ向かう。このマリアという女性はアランの幼なじみで、アランに好意を寄せているのですが、この好意が屈折した愛へと変化したんですね・・・。アランがかわいそうで、女医さんが無駄にセクシー。そんな話。これってある意味レイプなんじゃないの?
「確定囚アラン・イシダの真実」ついにアランの死刑が執行されることになった。死刑当日まで砂時計で時を計りながら空ろに過ごすアラン。そして明かされるシュルツ老の正体。とうとう死刑執行か・・・というところで、逆転につぐ逆転。なんと死刑はお金持ちに向けたショービジネスだったのです!あるある!黒幕は、ジャリーミスタンのえらい人。あるある!死刑執行直前にアランを助けにきたシュルツ老人。相討ちになって、アランだけを逃がそうとする。あるある!というあるある展開が続きましたが、最後の1行がもう一回物語をひっくり返しました。シュルツ老人には絶対何かあるぜ。こいつは犯人の香りがする・・・。と思っていたのですが、想像を上回るマッド・サイエンティストでした。彼にとっての子供とは、ウィルスだったんですねえ・・・。後半、アランがかわいそうだったなあ・・・。


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