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読書の記録です。

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「スペードの3」

朝井リョウ/講談社

ミュージカル女優のファンクラブまとめ役という地位にしがみついている美知代。地味で冴えないむつ美。かつての栄光は見る影もない女優のつかさ。待ってたって、「革命」なんて起きないから。私の人生を動かしてくれるのは、誰?

やーらーれーたー!
朝井さんは、学生時代女の子だったんですか?っていうくらい、女の生態を良くわかっていらっしゃる!笑。心にいっぱいのトゲが刺さりました。これは是非とも女性に読んで欲しいなあ。
私自身が受け身のタイプなので、1話目の「スペードの3」が特に刺さりました。主人公の美知代は、小学校の時に転校生の愛季に自分の居場所を奪われたことを、今もひきずっている。大人になり、自分の思うままに動く集団(ファンクラブ)を手に入れた美知代。しかし、新しい入会者が現れ、少しずつ歯車が狂っていく・・・。最後の彼女の正体には私も騙されました・・・。美知代とは友達になれそうにありませんが、そんなに腹を立てることもありませんでした。計算だらけで、上手く立ち回っているつもりでも、本当に欲しいものを手に入れることができない。臆病者が虚勢を張ってるだけだもの。かわいそうです。もっとも嫌いなのは、もちろん愛季に決まってます。トンビが油揚げとってくみたいな、おいしいとこどりな感じが腹立つわー。こいつ絶対全部計算しとるで。一番の腹黒さんは絶対愛季だね!と思っていた私は、愛季の転落人生を望んでいたのですが(←性悪)、どうやら幸せそうで、余計にむかつきます。・・・いやいや、そんな昔の人気者が今どうしているかなんてどうでも良いのです。今いるところは学校の教室じゃない。まずは、届かなくても、欲しいものに精一杯手をのばしてみようよ。という、あきらめ気味な人に対するエールなのかなと思いました。
2話目「ハートの2」の主人公は、いじめられっ子のむつみ。1人ぼっちじゃないから、あの子よりマシじゃんって安心してた自分を思い出します。同じ学校の出身者がいないっていう、あの開放感もわかります。むつみが新しい学校で、自分の居場所を作っていくところは本当に良かったなあと思いながら読んでいました。好きな人もできた。でも、どうしてもコンプレックスから脱け出すことができない。自分を変えたいのは、好きな人に好かれたいから?弟に自慢して欲しいから?誰かのためは、裏返せば自分のため。ただの自己満足でいいじゃない!ここから、スペードの3の彼女につながったんやなーと納得。
最終話「ダイヤのエース」の主人公は落ち目の女優・香北つかさ。(架空の宝塚のような)劇団時代の思い出とともに、今の彼女の葛藤が描かれています。ライバルに努力や実力で負けたと思いたくない!っていうつかさの気持ちがわかるなあと思った。平凡なことが一番幸せなんだけど、特別な生い立ちとか非凡な能力とか、自分にもあったら自分は特別な人間になれてたのかなって。そういう「たられば」は言っても仕方ないのですが。このまま、ぱっとしないまま消えていくのならば、まだ注目が集まるうちに引退した方がいいんじゃないか。打算が心の中を渦巻くけれど、つかさは最後に芸能界にしがみつくことを選ぶ。ないものをねだってもしょうがない。人生は配られたカードで勝負するしかないんだから!(BYスヌーピー)


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