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読書の記録です。

「逆説探偵」

鳥飼否宇/双葉社

綾鹿警察署・五龍神田刑事が、次々と起こる事件の謎に挑む!事件解決のヒントは、正体不明のホームレス十徳治郎が握る。あまりにも意外で皮肉な12人の真犯人とは!?そして、最後に残る物語最大の謎とは!?

表紙はダンボールとビニールシート。どっかで見たことあるパターンと、ホームレス。これ、読んだことあるかもと思っていたら、ここに載ってたものではないですか!シリーズものとは知らなかったなあ。正直、このパターンが続くのはしんどい。笑。2段構えの謎解きはおもしろい。タイトルからしてもう、ヒントみたいなもの。語呂がいいです。“ひとりよがりにストーカー”“猫も杓子も殺人鬼”とか。しんどいのは、後半、五龍神田君の的を外した推理。彼が得意気に推理を披露している時、すでに謎は解かれた後なんですよ・・・。か、哀しすぎる・・・!心が痛む。
事件や犯人にも、色々バリエーションがあって、設定は良かったですよ。最後の方は、じっとくの謎など山場があって盛り上がりました。メッセージに隠された意味、という点で、やはり“敬虔すぎた狂信者”が一番きれいにまとまっていたかな、と思います。というか、あれはダイイングメッセージじゃないですね!笑。すいません、感想間違えてます。何を思ってキーを叩いていたのやら。


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「レインツリーの国」

有川浩/新潮社

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった。

感性や価値観の一致で魅かれたら、顔を知らなくても恋に落ちるのだろうか。
物語のコンセプト自体に、最初から違和感を感じます。
実際に、ネットで知り合って結婚する方は、少なからず存在するようですので、あり得ることなんだろうなー、とは思います。オフ会とかすごいですよね・・・。私は、そういうコミュニティに参加していないので、お誘いがかかることは無いのですが(笑)、実際に会うなんて考えられない。おそろしやー。
彼女は、私のようなチキンな理由ではなく、身体的な問題が大きなハードルとなっています。健常者には、どうしても越えられない壁って存在する。ちょっと卑屈になりすぎじゃないの?ってイライラすることもあったけれど、優しくリードしてあげる伸行が微笑ましかった。
関西人の中でも、大阪の人は特に勢いがすごいと思います。自分が大人しい性格ということもあるんですが、それを差し引いても、あの勢いは他県出身者にはありません。笑。呑まれますね。くやしいわー。
様々な問題を正面からとらえており、決してきれいごとばかりでは無かった。ケンカをして仲直りをして、どこにでもある恋人達の姿。しかし、私にはどうしても「きれいな作り物」にしか見えなかった。全体的に説教くさいからかなー。


「白の鳥と黒の鳥」

いしいしんじ/角川書店

耳を澄ませば、すぐ近くに聞こえてくる、小鳥たちのさえずり、住人たちの笑いと息づかい。世界のはしっこで生きぬく幸福な物語。物語の魔法つかい、いしいしんじの愛しき短篇小説集。

「雪屋のロッスさん」で味をしめて、読んでみました2冊め。
・・・難解でした・・・。
不思議な世界観にはギャップを感じなかったのですが、物語の着地点が「?」というものが多かったと思います。もちろん、中にはいいものもありました。
“カラタチとブルーベル”“すげ替えられた顔色”“薄い金髪のジェーン”“おっとせいを飼う”“赤と青の双子”“透明に関する四つの小話”“紅葉狩り顛末”“太ったひとばかりが住んでいる村”
が良かったです。中でも、“透明に関する~”が好き。この長さのお話が、一番しっくりくるようです。
この本を読んでいて、「あ、“独白するユニバーサル横メルカトル”に似てる・・・。」と感じました。全然方向性は違うんですけれども。狂気とか、エゴイズムとか、そんなようなものを感じるんです。平山さんはエグ味の中に、いしいさんは絵本の中に隠しているような・・・。不思議の中に、一滴加えるエッセンスに、同じ香りを感じました。あくまで、私の主観ですので、怒らないで下さいねー。(両作家さんのファンの皆様へ)


「クジラのソラ 01」

瀬尾つかさ/富士見書房

10年前。異星人が人類に課した“ゲーム”。“ゲーム”のWG優勝者であり、宇宙へ旅立った兄の後を追う少女・桟敷原雫は、伝説のメカニックと言われる聖一を自分のチーム“ジュライ”に引き入れようと奮闘する。

たぶんSF・・・だと思う。話のアイディアは好きなので、大まかな話の流れは楽しめたのですが、登場人物やら細かい所で不満が残ります。
ちょっと、会話のテンポに乗れなかったな。年のせいだか何なんだか。
あと、雫の主体性の無さが好きになれない・・・。兄さんを追いかけるためだけっていうのが、なんだかなー。置いていかれたから追いかけるって、もし追いついたら、君はその後どうするの?
最後の展開も都合が良すぎる。「ドラゴンボール」みたいな感じ!「俺もスーパーサイヤ人になるぜ!」みたいなノリで、みんなスーパーサイヤ人になっちゃったというやつ。あれと同じで、「なんだ、意外と簡単にアウターシンガーになれるんだー。」というあっけなさを感じました。同時に、アウターシンガーの希少性や、価値が無くなったと思います。別の方向で、雫とジュライが強くなる方法って無かったんかなあ、とそこが残念。
しかし、筐体に入っての宇宙のどこかでの戦争は、まあまあおもしろい。戦略がもっと広がることを期待したいです。頭の中で、シュミレートしにくいのが難点ですがー。ところで、異性人の姿かたちが気になるところです。おそらく人型だろうとは思いますが。


「ジョン平とぼくと」

大西科学/ソフトバンククリエイティブ

そこは小さな魔法が日常的に存在する世界。魔法の苦手な高校生・北見重は使い魔・ジョン平とともに、なんとか日々をやりすごしている。そんなある日、新任の物理化学教師がやってくる。それは大きな出来事の序曲にすぎなかった。

「砂浜。トマト。振り子。靴」
意味の無い言葉の羅列。けれど、この言葉の組み合わせを唱えると、空中に光球が生まれる。今まで、色々ライトノベルを読んできたけれど、こんな呪文初めて見たよ。
この世界では、日常的に魔法が使われ、ほとんどの人に専属の使い魔が存在します。いいなあ。私だったら、やっぱり犬か猫かな。フクロウもヘドウィグみたいでいいな。鳥なら鷹もかっこいいよね、などここだけで妄想は果てしなく広がります。しかも、彼らは馴致されていくに従って、人間顔負けの思考をし、流暢に言葉を喋り、いつしかかけがえのないパートナーとなるのです。
主人公・重の使い魔は犬のジョン平。かわいいもの好きにとっては、もう、ジョン平がたまらない!「じょんぺい、ごめんって、いってごめん」とか。かわいい奴め!
事件は大掛かりなものではなく、小さく収まったという感じ。細菌が使い魔って、ある意味最強じゃないのって思ったり。最後はうやむやに終了。ネタバレになりますが、本筋の事件よりもショッキングだったのが、交際発覚。幼なじみなら、なおさら言わなくちゃ駄目だって!朝の特訓に付き合ってもらったりしたら、勘違いもするよ。重に気を持たせる行動をする前に、探偵ごっこは彼氏としたらどうかね。1年前からだったら、もう、言うタイミングなんてとっくの昔に逃してて、このまま重には隠したまま、3人で今まで通りなあなあで付き合おうって思ってたんでしょう?私も、付き合ってることを第3者から知って、「聞いた時に、何故教えてくれなかったのか」と思ったことがあるので、すごくこの辺は重に同情的でした。私の場合、好きでも何でも無かったから、友情ダメージだけで済みましたけど、彼の場合はこれに失恋ダメージも加わりますから、総合ダメージは結構なものだろうな。試験も含めてその他もろもろ、ジョン平と共に頑張って欲しい。


「魔法は、信じることによって成り立っているのだ。疑い、考えることではなく。」