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読書の記録です。

「the TEAM」

井上夢人/集英社

盲目で難聴の人気霊導師、能城あや子。百発百中の"霊視"を支えるのは、彼女の仲間たちだった。過去の事件の真相や、不思議な現象の真実を次から次へと暴き出すミステリー短編集。

怪奇現象に理由づけがされたら、どんなにかすっきりすることだろう、と思いました。手段は、あまり褒められたものではありません。でも、こういった優しい嘘なら許せるかなあ。でも、家に入られるのはやだなあ・・・。
井上夢人さんと言えば、以前にもちらりと触れた「風が吹けば桶屋がもうかる」がとてもおもしろいですよ!この作品のインパクトが強すぎて、他にも2冊ほど読んだのですが、いまいちーって感じでした。今回も、確かにおもしろいのですが、インパクト不足は否定できないなあ。
現代の情報収集で避けては通れないインターネット。本当に作家さんにとっては、大変な世の中だよなあ・・・と思います。金田一さんなんか、ちょっと調べ物をしに東京へ帰るために、フツーに何日間か消えたりしますもんね。笑。で、その間に何人か殺されちゃうという・・・。
現代では、そんな事はありえないわけで。社内LAN、ウイルスプログラム、掲示板・・・等々、うまくネットとパソコンが活用されていると思います。あくまで素人目なので、プロのプログラマーさんが見たら、また違う粗が見えてくるのかな?ミステリー好きのSEは多そう。ミステリーとインターネットの融合は難しい・・・。


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「焼きそばうえだ」

さくらももこ/小学館

ぜんぶ冗談でも本気!!ひょんなことから植田さんのためにバリでヤキソバ屋を始めることになった「男子の会」。爆笑と感動のエッセイ。

そういうえば、今日は実写版ちびまる子ちゃんの放映日だ。タイムリー!
さくらさんのエッセイは、本当に久しぶり。「鯛のおかしら」以来・・・?最近、あまり見かけなくなったなあ、と思っていたら、バリで焼きそば屋を作ってみたり、さくらプロダクションとか出来てたり、息子がいたり、見たことも無い本が紹介されていたり、色々活動されていたんだなあ、と失礼な驚きを感じました。
バリで焼きそば屋を開店するまでのお話なのですが、話の発端からして、もう脱力ものです。実に馬鹿馬鹿しい!(褒め言葉)真面目に遊ぶ大人って素晴らしい、と改めて思いました。
植田さんの扱いが、なかなかひどい。笑。毒を含んだ文章を読んで、「ちびまる子ちゃん」のシュールな空気を思い出しました。でも、時々「もしかして、植田さんってめっちゃおいしい役なんちゃうん・・・?」と思わせるのは、男子の会メンバーのいじり方に愛が感じられるからでしょうか。でも、やっぱり嫌なポジション・・・。
家で作る焼きそばは、好きではないのですが、屋台の焼きそばは大好きです。なんであんなに味が違うんでしょう~?「焼きそばうえだ」の焼きそばは気になりますが、それだけの為にバリに行くなんて考えられない。私もまだまだ遊び心が足りません。


「戦鬼」

川口士/富士見書房

突如、人間達に襲われた鬼の村。17歳の鬼の少年・温羅は捕らえられ、彼の父の首は都に晒される。復讐に心を燃やす少年・温羅と人間の少女の旅の物語。

富士見ファンタジア大賞、大賞作品にかける、あたいの期待は大きいよ!
ライトノベルファンの方々はご存知でしょうが、大賞作品は過去3回しか出ていません。五代さんは未読なのですが贔屓の作家さんだし、滝川羊さんの「風の白猿神」は読後、続きが出ていないことが非常に残念でした。実は今も密かに続編を待っています・・・。貴子さんの「12月のベロニカ」。感動モノという宣伝文句に、「絶対泣かねーよ!」と思って挑んだのですが(私はひねくれ者なので、感動狙いの作品に挑む時は、大体このような心構えをします。)、読み終わった時は、おいおい泣いていました。そして、私は信じることにしたのです。「ほかの受賞作は当たりハズレがあるかもしれない・・・。だけど、だけど、大賞だけはハズレなしだっ!」心の叫び。
私が何故に、こんなにも大賞受賞作を支持するかというと、情熱を感じるからなんです!引力!パワー!読む前の先入観なんて、力技でひっくり返して欲しいわけです。
で、この長い前フリで何を言いたかったかというと、4度目の大賞受賞作を読んで、早くも私の「大賞受賞作、ハズレなし」がひっくりかえってしまったということですー・・・。ファンタジア大賞の新人さんには甘めなので(笑)、作品についての不満を書き連ねるつもりはありません。
・・・いや、一つだけ!せめて、名前をもう少しひねって欲しかったです。まー、主役級もそのまんまなんですが、「猿・鳥・犬」「鍬戸(くわと)・鍬矢(すきや)」とか涙が出そうになりました・・・。農具やん・・・。涙。鬼さんと梓ちゃんの心の交流は良かった。伏線は蛇足だったような・・・?式神スキーな私は、川楊さんの後半の盛り返しが好きでしたー。戦いのシーンは、臨場感が出るともっと良くなると思います。
こんな感じで、いわゆるフツーの和風ファンタジーです。もし、この作品が大賞以外の賞なら、普通におもしろいと感じたと思います。パワー不足だー、とか、期待ハズレだー、とか、がっかりする必要など無かったはず。私で、これですから、もっと辛辣な感想を持たれる方もいらっしゃるでしょう。大賞以外でも、活躍されている作家さんは、たくさんいらっしゃいます。そこで、「なぜ、編集部は、あえてパンチ不足の作品を大賞に選んだのか?」という疑問を感じてしまうのです。大賞を出して行こうという方向性に変わったのか、編集の顔ぶれが変わったのか・・・。何が起こったのか、内部の思惑を想像してしまいます・・・。ホントのところはどうなんでしょう?
批判的になってしまいましたが、おもしろくないというわけでは無いので、興味を持たれた方は、一度手にとってみてはいかがでしょうか。


「きょうの猫村さん 1」

ほしよりこ/マガジンハウス

主役は猫の家政婦「猫村ねこ」昔かわいがってくれた坊ちゃんを探すべく、犬神家に奉公することになる。家庭崩壊しつつある一家を猫村さんが救う!

まさか、図書館で借りる日が来るとは・・・。笑。
いまさら解説する必要もないと思いますが、漫画です。1コマ漫画の連載。
字も絵も、上手ではないのですが、漫画全体にひろがる空気が好きです。
読んでいる間、思い浮かべていたのは、市原悦子さん主演の「家政婦は見た!」シリーズの家政婦を派遣しているあの家・・・。家政婦さんは、やはり探偵ドラマがお好きなようです。
豪邸の謎めいた隠し部屋と言えば、横溝正史の「獄門島」っぽいですが、ファンシーな猫村さんワールドではどうなるのでしょうか。引きも何もなく、話の途中でぶっつりきれているところが、なんとも投げやりで素敵です。
どこにでもいる、人(猫?)のいい世話好きのおばさん、猫村さん。1家に1人(匹)いたら・・・。微妙にウザいかもしれない・・・。


「夜のピクニック」

恩田陸/新潮社

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために。

私も、修学旅行より歩行祭が良かったな~。
修学旅行も楽しいもんですが、高校生活最後のイベントをじっくりと噛み締めている彼女達がうらやましいです。私、スキーだったんですけど、修学旅行は、確か2年の終わりに済ませたので、高校生活振り返るとかそういうポジションに無かったんですよねー。笑。
歩きながら話す、という設定は「黒と茶の幻想」に似たものを感じ、あまり新鮮味は感じなかったです。そのせいか、つまらなくは無かったのですが、会話や思考などに今ひとつ面白みを感じず、「これはいまいちかな」と思っていました。ところがところが、最後の最後で貴子と融が和解するあたりの盛り上がりが、ぐっときましたねー。ぎくしゃくしてた友達と、ふっと会話が出来た時の嬉しさを思い出しました。うん、2人とも良かったねえ。ロマンティックできれいな締め方も、青春小説なら成功と言っていいと思います。
ただ、評判ほどおもしろいかというと、そうでもなかったなあと言うのが正直なところ。過度な期待は危険だと思いました。


「だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。」
意外に熱い忍くんが好きでした。押し付けがましくないところがいい。