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読書の記録です。

「丑三つ時から夜明けまで」

大倉崇裕/光文社

闇金融の経営者が地下5メートルの書斎で殺害された。現場は「密室」、となると…。「やはり、犯人は幽霊以外にはありえません」!?奇抜な設定を巧みに生かした短編集。

神(あるいは宗教)を信じないと言ってる私ですが、霊の存在は微妙に信じています。そんな頻繁ではないので(笑)霊感は弱いんですが・・・。霊も視えるわけではなく、すっごく嫌な感じの場所があったり、金縛りにあったり(下宿中)程度。でも、その感覚がすごく怖い・・・。主人公みたく、人魂が視えるレベルだと気が狂ってしまうと思う。かわいそう・・・と彼に深く同情しておりました。
人物紹介から「少女」「袴姿」など「警察?」って感じの説明文だったのですが、本文を読んで納得。特殊能力を持った人たちが集まるセクションなのですねー。幽霊の存在(エネルギー体)が科学的に立証されたという世界観。不可能犯罪の犯人は幽霊。その犯罪が人間には犯せないと判断して、はじめて幽霊の犯行を疑うので、不可能じゃない状況で殺しちゃえば幽霊は疑われないで済むのでは・・・?と思ったり。エネルギー体はそこまで考えてないか。
推理小説としては破綻してしまいそうな設定ですが(壁抜けOK。移動に時間がかからない。等)、そこからさらに不可能な状況を作り出し解決まで持っていく、というなかなか凝った展開です。話の展開は同じパターンなのですが、後半はだんだんエンディングが寂しい感じに・・・。


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「魔王」

伊坂幸太郎/講談社

不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作!

やばい!超能力が出てきた!
現代ミステリーと超能力の融合はおもしろいと感じたことが少ないので、危機感を感じました。ところが、振り返って見ると超能力も政治も通り越して、後に残っているのは一人で立ち向かったお兄さんと、その意思を継ごうとしている弟と二人の背中なんです。うわー、すごい。“呼吸”のラスト部分を読んで泣きそうになりました。一番最後で抜粋してますが、これだけでは何がなんだか・・・ですね。笑。
シューベルトの“魔王”と宮沢賢治と言えば、知らない人はいないと思います。特に表題作“魔王”は、子供が自分だけに見える魔王に恐怖を覚える姿が安藤と見事に重なります。宮沢賢治は、“銀河鉄道の夜”でダウンした記憶が・・・。そのイメージ(不思議空間)が強いので、詩を書いているなんて知らなかった。“注文の多い料理店”は好きです。ドゥーチェのマスターの言うことにも一理ありますが、結局自分も能力を使って干渉しているのだから、何もそこまでしなくても・・・。(彼がしたことかどうか確証はありませんが。)他にも反対する人はいたみたいなので、もう少し時期を待って犬養反対派超能力仲間を集めて(5人くらい)、超能力戦やったら勝てたかも!と思わずにはいられません・・・。違う話になるか・・・。
何かに寄りかかって歩むのは悪ではない。けれど、考えることを放棄してはいけない。
・・・ところで、冒険野郎マクガイバーが気になる・・・。


「その瞬間、私は自分がいるのがマンションの一室であるにもかかわらず、頭上の天井や屋根が取り払われるのを感じた。上を見ればそこには、決して手の届かない空が広がっていて、旋回するオオタカもかすかに確認できた。気を抜くと先ほど見えた、荒れ果てた土地の光景が現われるような恐怖もあり、私は必死に、その澄み渡る空を見つめ続ける。力を抜き、手を揺らせば、その遥か遠くの青空に向かい、身体が飛ぶようにも思えた。未来は晴朗なものなのか、荒廃なのか。」


「D.Gray-man reverse2」

城崎火也(原作:星野桂)/集英社

ノベライズ第2巻!千年公の謎の日常に迫る伯爵編。人気エクソシスト、ラビの秘密を描いたラビ編。そしてファン必見のエクソシスト大集合、教団親睦パーティー編の3本立て!

さらっとネットを回ってみたところ、「内容が薄い」「ラビの過去が明らかになっていない」と不評のようですが、私はなかなか良く登場人物の個性を掴んで動かしているのではないかと思います。少なくとも、不自然さは感じなかった。ラビの過去については、そういう煽り文句があったことすら知らなかったので、何とも。でも、ラビの過去を知りたいがために本を読んだ人はちょっとかわいそうかな・・・。確かに核心には触れていない。それにしても、Dグレのファンに腐女子が多いってホンマやってんなあ。と感嘆しました。そう見るのか。友情とか信頼とは捉えないのか。笑。
馬鹿騒ぎしているパーティーの話が一番良かったです。漫画じゃありえないもん。楽しませてもらいました。本編はハードな展開だからなー。偶然カバーが外れたら、コムイさんが・・・。アフロ・・・?シャワーキャップ・・・?


「狂骨の夢」

京極夏彦/講談社

夫を四度殺した女。極度の強迫観念に脅える元精神科医。神を信じ得ぬ牧師。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。京極堂は憑物を落とせるのか?

京極堂は約3分の2が過ぎたあたりで登場。遅いよ!それから後は京極堂オンステージ!なわけですが。
夢か狂気としか説明の仕様のない状況が、理路整然と整理されていく様はお見事。特に3人の復員服姿の男と、金色髑髏事件の辺りはなるほどと言うより他ありません。二人の朱美は、伊佐間が会った朱美と教会の朱美は別人ぽいなあと思っていたので、まあ許せる範囲かなあ。すごい思い込みですけれども。
宗教って禁欲的なものだと思ってたんですが、何事にもイレギュラーなものって存在するんですねー。京極堂の講釈はちんぷんかんぷんでしたが、とてつもない虚妄だということはわかりました。うーん、それがすべての始まりなんてくだらない・・・。
メインの登場人物が出てくるまで、波がーとかフロイトがーとかうだうだ言ってるページが長かったために、今回はちょっと中だるみ(前だるみ?)してしまいました。残念。髑髏を取り巻く事件のつながりは読んでておもしろかったです。
次は鼠かー。


「榎さん、この手の話に双子は拙い」
「なぜだ!双子だって犯罪を犯すし、双子だって殺されることもあるぞ。関君、君は双子に人権を与えないのか」
榎木津さんは今回も絶好調。
双子はまずいって。四つ子はもっとまずいんだって!笑。


「紅牙のルビーウルフ 3」

淡路帆稀/富士見書房

グラディウスの西の僻地を治めるハリス伯爵の屋敷を訪れたルビーとジェイド。その翌日、ジェイドが伯爵の娘・クラリッサとともに姿を消した。激しく動揺するルビー。果たして真相は!?

だんだんスケールダウンしているような気がする3巻目。
私的には、ケーナとフロストのわんわんコンビの出番が多かったので、まあ良かったんですけれども。今回は、簡単に言えばルビーとジェイドがお互いの存在の大きさに気付くという話。今更何を・・・。笑。・・・じれったーい・・・。もう、さっさと結婚でも何でもしてしまえー!という気分です。
このシリーズには、もっとスケールの大きなファンタジーを期待していたので、正直内容の薄さにとまどっているというか・・・。特にこの世界全体を視野に入れた題材がもう無いのか。それとも、ルビーとジェイドの関係に重点を置いた方が読者受けがいいからなのか。その辺良くわかりませんが、このままではせっかくの男前ルビーさんが、将来ジェイドの隣りで赤ちゃんを抱いて微笑んでいるという非常にありきたりなエンディングしか想像できないー・・・。