忍者ブログ
読書の記録です。

「書店ガール」

碧野圭/PHP研究所

吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、部下亜紀の扱いに手を焼いていた。協調性がなく、恋愛も自由奔放。仕事でも好き勝手な提案ばかり。一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。そんなある日、店にとんでもない危機が襲う。

本屋さんで働きたいと思ったこと、ありますか?
私、ないんですよねー。図書館では働きたいと思ったことがあって、司書の資格は取ったんですけど・・・。結婚できたら、派遣社員でいいから図書館で働きたい・・・。本屋と図書館の違いは、営利か非営利かっていうことがあると思うんですけど、本を商業的に考える・・・ということができないせいかもしれません。お客様と本をつなぐ、とは言っても、売れてナンボやもんなー。
主人公は40歳・独身の西岡理子。最近彼氏に二股をかけられた挙句、振られてしまった。かたや、部下の北村亜紀はコネで入社した27歳。美人。新婚。夫は大手編集部のやりて編集者。このキーワードだけで、私も亜紀に対する反発心がムクムクわいてきてしまいます。笑。
しかし、読んでいくと亜紀は非常にまっすぐな人で、正直なだけなんですね。まあ、だから罪がないというわけではなく・・・。これを相手が上手くかわせたり、受け止めたりできるかが人間関係が良好になるポイントなんだろうなと思いました。受け手側の理子は、亜紀より年上とはいえ(年上だからこそ?)彼女のストレートな物言いを受け止めきれず、なんだか苦手・・・から、気に食わない!この小娘!になったのかなー。
自分が嫌いな人は、大抵向こうも自分のことが嫌い。・・・というわけで、何かと反発する2人ですが、閉店の危機にタッグを組んで立ち向かうことになります。意外にも、最初はいい感じだった男性社員たちが、手のひらを返したように、理子に数々の嫌がらせをする展開には驚きました。男の嫉妬ってやっかいですね・・・。亜紀の平手打ちで、胸がスッとしました。よくやった!笑。
最後の巻き返しは、お約束の展開で、実際はそんなうまいこといくわけがない!と分かっていても、爽快でした。私、フェアとか全く興味ないですが、色々考えて作られてるんですよねー。とはいえ、やっぱり飾りつけとかPOPは好きになれないです。POPって結局は感想文で、店の中に飾ってあるのってなんかうるさいっていうか・・・。うまく言えないんですが。
最後は残念である(何だあの社長は!)と同時に、次巻への期待が膨らみました。
決して上客ではございませんが、私も本屋さんが大好きです。


「本屋は本のショールームだもの。」

「本屋で売っているのが、一番素敵に見えるのだもの。」


PR

「ジェノサイド」

高野和明/角川書店

創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、急死した父親の遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、「人類全体に奉仕する」作戦に参加することになる。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入する。

「野生時代」で途中まで読んでいたのですが、そういや結末はどうなったのかな~と思い、読んでみることにしました。そういえば、何年か前の「このミス」で1位をとってましたね。私の印象では、SFかサスペンスというイメージだったので、このランキングを参考にミステリーだと思って読んだら、騙された気分にならないかなあと思ってました。まあ、その時はイエーガー達が、コンゴの脱出を開始したあたりだったので、その後なんかあったのかな、と。最後まで読んでみて・・・、やっぱりこれはミステリーじゃないなあ、というのが私の感想です。ハイズマン博士からルーベンスへの謎かけをミステリーとしてみることも可能ですが・・・。でもやっぱりSFだよな・・・。
物語の主軸は3ヶ所。日本の古賀研人(薬担当)、コンゴのイエーガー(新人類担当)、アメリカのルーベンス(アメリカの内政担当)の3者が物語を展開していきます。とにかく展開がスピーディで、本の分厚さを感じさせないです。映画を観てるような感覚が近いです。題名の「ジェノサイド」の意味は大量殺戮。人だけが、同種族の中で大量殺戮を行うのだそうです。そんな人類がさらに進化し、新人類が誕生した!将来的には、現在の人類は淘汰され、新人類が生き残るだろう。事態を重く見たアメリカ政府は、新人類の抹殺計画を実行に移す。新人類も黙ってなくて、コンゴから脱出するために自分を殺しに来たはずの衛兵を味方につける。そのために、日本の古賀親子に薬を作るためのソフトを与える。そして、その薬をエサに難病の息子を持つイエーガーを仲間に取り込んだのだ。
こうやって見ると、新人類おそろしいですね・・・。自分が日本に行くために、勧誘しやすいターゲットが候補に挙がるまで、候補者を殺し続けるし・・・。将来、新人類が大多数を占める世の中になったとしても、また争いが起きるんじゃないかなあとは思います。だって、今ですらこんな悪知恵が働くんだぜ?成長したら、すごい策士になりそう。
ミックの扱いがちょっとひっかかったんですが・・・。日本人をそこまで悪者にしないでも・・・。ミック、最後まで最悪な人でした。日本人の中でも、あそこまで凶暴性むき出しなのは珍しいと思うんだけどなあ。韓国との話とか、話の流れとかみ合っておらず、思想の部分では?となりました。ジョンフンはいい人だと思うけど、それを強調するために伯父さんのエピソードを持ってくるのは、どうなんでしょう?
創薬のパートは、うまくいきすぎ感がものすごいですが、うまくいかないと話が盛り上がらないわけで。笑。でも、実際研究ってそんな簡単にいかないよね。渦中のSTAP細胞も、もし、本当にあったらそれは素晴らしいことだけど、ips細胞ですら適用がまだ角膜など一部に留まっていることから見れば、人間の体は本当に奇跡で、そんな簡単に切ったり貼ったり増やしたりできるもんじゃないんだなと思います。でも、挑戦し続ける科学者のスピリットが素晴らしいです!話が混ざっちゃったけど、研人君の目標がクリアになって、お父さんへのわだかまりが無くなったのは良かった。できれば生きてる間にわかりあえたら良かったのにね。
人類はゆるやかに衰退の一途を辿るだけ・・・。という展開は残念です。人間もそんなに捨てたもんではないと思うのですが・・・。


「シュークリーム・パニック<Wクリーム>」

倉知淳/講談社

体質改善セミナーに参加したメタボな男性4人組。インストラクターの無慈悲な指導によって、耐え難い空腹感が行き場のない怒りへと変わっていく中、冷蔵庫のシュークリームが盗まれる事件が発生する。ミステリマニアの受講者、四谷は探偵役に名乗りを上げる!

シュークリーム・パニックの片割れ「Wシュークリーム」編です。
「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」うーん、実に馬鹿馬鹿しい・・・!(褒め言葉)インストラクターのシュークリーム(1個420円)が盗まれた!この体質改善セミナーは人里離れた田舎で行われており、外部犯とは考えにくい。犯人はこの中にいる!・・・四谷さん、途中まではいい感じだったんですけどねえ。まあ、お腹が空いたら、後先のことなんて考えないもんなのかもしれません。笑。それにしても、インストラクターの十津川さんに、猫丸先輩に相通じるものを感じます。あの、べらべら喋るところとか。
「通い猫ぐるぐる」作者の猫愛にあふれた一品。うずまきちゃん(猫の名前)の仕草ひとつとっても、やけに描写が細かい。笑。爪に隠された暗号よりも、主人公たちの結婚よりも、うずまきちゃんが「にゃあん」と鳴くシーンを書きたかったのではないかと思っちゃった。ちなみに、私は一緒に暮らすなら犬派ですが、生まれ変わるなら猫派です。
「名探偵南郷九条の失策ー怪盗ジャスティスからの予告状ー」アンフェア?うるせえっ。やかましいっ。・・・と先に言われたら、何にも言えないじゃないですか!もし、これから読む人がいたら、犯人当てをするだけ無駄だとアドバイスしたい。アニメファンのサイン色紙に落書きをしたのは誰?という謎。材料が、呼び名だけっていうのはなあ・・・。「つるさんはまるまるむし」という絵描き歌が懐かしかったです。描いた描いた。
コメディ→猫→アンフェアな感じで、こちらは脱力系かな。私はこっちの方が好きです。しかし、これ1冊にまとめた方が題名との整合性がとれるような気が・・・。講談社の新書って結構分厚いの多いからいけそうなもんなのに・・・。


「まあまあまあ、ちょっと、あなた、落ち着いて落ち着いて」

「それで、どこに置いてあったんですか、その特製濃縮プレジデントシュークリームは」


「シュークリーム・パニック<生チョコレート>」

倉知淳/講談社

高校2年生の夏休み。「僕」は仲間たちと映画制作を始めた。監督の「僕」は以前から気になっていた同級生、百合川京子を主役に抜擢し、撮影は快調。しかしその最終日、ラストシーンのロケ場所から、彼女の姿が消えた!?(「夏の終わりと僕らの影と」)

短編集が出たあと、もう5、6年新刊出ないんじゃないかと思ってましたが、意外に早く新刊が出て嬉しいです。こちらは、「メフィスト」に掲載された短編集をまとめたもの。「生チョコレート」と「Wクリーム」の2冊が出ています。とりあえず、順番通りに・・・。
「現金強奪作戦!(但し現地集合)」銀行強盗の完全犯罪!今回、主人公はオトリだったけど、上手くいったのを見たら自分でもやりたくなっちゃうよね~。でも、こういうのって2番煎じは失敗するようにできてるんだよな・・・。マジメに働いた方がいいよ。
「強運の男」きっと、最後は騙されて終わるんだろうなあと思っていたら、一番大事なものを取られてしまった!先に実験の主旨を説明してくれないと・・・。説明されて、賭けに乗る人はいないか。
「夏の終わりと僕らの影と」せいしゅん・・・。倉知さんはオチにLOVE注入の作品が多いよね!なんかもう、謎とかいらないじゃん。別にケーキじゃなくてもいいじゃん。(←ひがみ全開。)
そういえば・・・シュークリームの影も形も見当たらない・・・。
シリアス→シリアス→青春小説、とコメディ色の少ない作品でした。私的には、ちょっと物足りなかったかなー。


「夜の国のクーパー」

伊坂幸太郎/東京創元社

この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない・・・。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。

長い上に、退屈でした。
この一言で終わるのも寂しいですね。・・・なので、ちょいと付け足し。
主人公は、仙台の公務員と、パラレルワールド?の猫。仙台の公務員は、海釣りに出かけてそのまま遭難。流れついたのが、とある国の海岸。目覚めたときには、男は蔓で拘束されていた。そこに話しかけてきたのが、猫。この猫はある国に暮らす猫なのだが、その国が戦争で鉄国に負け侵略の危機にさらされている。このままでは、自分達の生活が脅かされる。で、なんか光る石(?)が武器になるってんで、馬に乗ってここまできたらしい。
伊坂さんファンで、なんでもウェルカム!っていう人はそこそこ楽しめるかもしれません。しかし、初期の伊坂作品が好きな人には、もう、無理でしょう。笑。私は、伊坂さんの本の何が好きなのかなあ、と考えたときに、スカッとする痛快なところが好きなのかなあと思いました。しかし、最近の伊坂さんの本って、楽しむより考える?方向性のような気がします。それはすごくいいことなんですけど・・・。こう、もっとにじみ出てくるものが欲しいんですよね・・・。
伊坂さんの作品の中では、登場人物たちのちょっとお洒落なセリフの掛け合いが特徴的だと思うんですけど、これがだんだんスタイリッシュになりすぎて、ほんとにただの「台詞」になってるような印象を受けました。物語はフィクションなので、登場人物も話している内容だって全部作り物だってことは分かってます。分かってますが、まるで話している人間(あるいは猫や鼠)の表情が想像できない。能面みたいな顔が浮かんで、不気味さすら感じました。
ところでクーパーは、私もいないと思ってました。でも、途中でクーパーと戦うシーンが出てきて、「あら、やっぱり実在するんだわ」と思ったら、やっぱりいないっていうオチでした。あのシーンは夢か幻?
色々言いつつも、また読むんだろうなあと思います。それだけ前の作品はおもしろかったんだよ!残念なんだよー。