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読書の記録です。

「カラスの親指」

道尾秀介/講談社

“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは。

久しぶりに道尾さんの本を読んだのですが、こんな感じだっけ?と違和感を感じました。伊坂さんの作風に似ているような気がするんだよね・・・。前はこんなこと思いもしなかったような。淡白でちょっと皮肉めいた感じの伊坂風よりも、前みたいに少しどろっとしている方が道尾さんの小説には合ってるように感じました。もっとホラーを!
語り口は違っていましたが、最後のどんでん返しは相変わらずでした。ここまで騙しますか?ってくらいに、今回もやられたー。これは、ミステリ読者としてネタバレしてしまうことはできない。ですが、ここで終わるのも寂しいので、少し続きます。
「やさしい嘘」がキーワードだと思ったくらい、最後はみんないい人で驚いた。だからこそ、色々エグいことが起こっても、後味の良い終わり方だったんだろうなあと思います。1冊で何回も騙されるのはこりごりですが、この終わり方は良いと思うのです。主人公は詐欺師のコンビなので、嘘をつく場面がたくさん出てきます。私、どこかでも書いたように、嘘をつくのが超苦手なので、騙すシーンは心配で仕方ないです。心臓に悪い・・・。
テツさんが、英単語を暗記しているという設定で、物語のアクセントみたいな感じで、英単語が出てくるわけですが、それがどうも・・・。いらないような気が・・・。こういう作為的な演出はナイス!と思うときも、もちろんあるんです!でも、今回は合ってなかったなあ。


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「西の善き魔女1 旅立ちの巻」

荻原規子/中央公論新社

大切なものを守れるのは自分しかいないんだ。母の形見の首飾りから始まった荒野の少女フィリエルの旅。

約6年ぶりくらいの再読。久しぶりにユーシス様に会いたくなって・・・。
セラフィールドで暮らす少女・フィリエルが、パーティーに母親の形見の首飾りをしていったことから、自分が実は女王家の血筋であることを知り、陰謀に巻き込まれてゆく・・・というシンデレラストーリー。再読してみて、世界観に関することがこんなに楽しめたなんて!という点に驚きました。女王家とか星図がどうからんでくるのか、エフェメリスってなんだっけ?博士って結局どうなったのかしら。(←全部忘れた)みたいなことが、徐々に明らかになっていくところがおもしろい。もちろん、少女マンガみたいな恋の話もそれなりに楽しめますが、ユーシス様があまりにも堅物すぎて物足りなくなってしまいました。ユーシス様、もうちょっとフィリエルに接近してくれまいか。どっきりイベントを起こしてくれないか。
グラールという国は、代々女性が治めることになっていて、現在はオーガスタ皇女の娘、アデイルとレアンドラ2人の女王候補が擁立されています。フィリエルは、父で天文学者のディー博士が姿を消し、博士の弟子で幼なじみのルーンが異端の研究(天文学)を狙う組織にさらわれた事件により、アデイルを擁立するロウランド家を頼ります。フィリエルは、オーガスタの姉妹であるエディリーンの娘なので、彼女たちとは従姉妹という関係。貴族の権力争いの駆け引きの駒として、利用されることを覚悟しつつも、上流階級の貴族たちの予想の斜め上を行くフィリエル嬢のたくましさに感心します。
女王家の血を持ちながら、女王家の人間ではないフィリエルが、自分はどう生きるのか、色々な人間の思惑に傷つきながらも模索していきます。今まで自分が何も知らなかったことにショックを受けながらも、とにかくフィリエルは前向き。そのしなやかな輝きが、物語全体からあふれているようです。
後半はトーラスの女学校編。レアンドラ登場!私、アデイルも好きなんですけど、レアンドラの方がより好きになったなあ。なんだかかっこいい。強い女性はここで養成されているのか・・・。グラールの女性は、昔のくの一みたいなもんですかね。色仕掛けあり、暗殺あり、みたいな感じで。
次は宮廷デビュー!


「田村はまだか」

朝倉かすみ/光文社

深夜のバー。小学校クラス会の三次会。四十歳になる男女五人が「田村」を待つ。待ちながら各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。それにつけても田村はまだか?

表紙が田村さんかと思っていたら、「チャオ!」のマスターだった・・・。なぜ田村を持ってこない。
私は、まず小学校の同窓会の三次会まで残ることがないだろうなあ、と思っていました。小学校でそこまで強烈な記憶はないから・・・。クラスメートの前で公開告白なんて、自分が小学生の時には考えられなかったなあ。
当時から異様なオーラをまとっていた田村に、どうしても会いたい5人がお酒を飲みながら「田村はまだか」とか言っている話。う~ん、男子生徒にちょっと惹かれてしまう、いいちこさんのエピソードが印象に残っています。あと、「パンダ全速力」という2章の題名がおもしろいな、と。
人間40年も生きていれば色々あって、簡単には人に打ち明けられないことも増えていくものなかな、とぼんやり思っていた。とにかく文体が独特で、慣れないままでした。歯切れがいいのかな・・・?地の文で、いちいち人物名をフルネームで出すところが気になりました。ちょっと読みにくかったかも・・・。
最後は、本当にあっけにとられている内に終わってしまいました・・・。なんだこの変化球・・・。ハッピーエンドとはまた違っていて、こんなことなら普通に大トリで田村登場!で終わっていた方が良かったな・・・と思ってしまいました。だって、交通ルールを破った田村にも問題はあるわけで。


「ロードムービー」

辻村深月/講談社

誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用。それぞれの物語を、優しく包み込んで真正面から描いた珠玉の三編を収録。

「冷たい校舎の時は止まる」を読んだのはブログを始める前なので、5年前くらいになります。「子どもたちは夜と遊ぶ」の感想を見直した限りでは、くどいと感じていたようです。おお、いっちょ前に。笑。
その「冷たい~」のスピンオフ作品らしい、という前情報はありました。ありましたがっ!そんなに記憶力の良い読者などごくわずか!と思いたい。ええと、でも、特に問題なかったです。それはそれと思えば。
「ロードムービー」では、子どもの友情を。タカノのおじさんの家に、彼女がいた時のあのいたたまれなさが良くわかる。本当に、恥ずかしくって消えてしまいたい!「道の先」では、ひねた女子高生と塾のバイトくんの話。これが一番好きだなあ。そっと背中を押せる人ってすごいなあと思います。私、思春期はそのようなステキな大人になりたいと思っていたのですが、残念ながら、大人の私は、ろくなアドバイスができたためしがありません。むしろ、今どきの女子高生から恋のアドバイスをして欲しい。「雪の降る道」正直、泣きながら訴える子どもが苦手なもんで(人でなしみたいだなあ)、いい話なのは良くわかる。わかるけれども、うっとうしい・・・。という感じでした。「冷たい~」のプロローグに続くエピローグはわかりやすくて好きだ!
同じタイプの叙述トリックの多用はやめた方がいいって、思ってるんですけどね。登場人物の心情を描く手腕はあがってるけれど、最後の落としどころで、「またか・・・」とがっかりするのは、もったいない。
肝心のリンクがよくわからず、ネットで調べて「ふ~ん」と納得しましたが、いつかもう一回読もうと思いました。世の中にはたくさんの本があふれていて、しかもおもしろいから大変だ。一生かけても、本を読む時間が足りない。・・・とか言って、実はドラマを見る時間が増えたからなんだけど。


「別冊図書館戦争Ⅰ」

有川浩/アスキー・メディアワークス

「図書館戦争」のベタ甘全開スピンアウト別冊シリーズ第1弾。堂上篤、笠原郁の武闘派バカップル恋人期間の紆余曲折アソート。登場人物を中心に、図書館の比較的小さな日常事件を絡めて綴ったラブコメ仕様。

最近気分が乗らず、感想を書き逃しています・・・。記憶力悪いのにー、と反省。ちょこちょこ書いていかなきゃ・・・!
言わずと知れた「図書館戦争」シリーズ。私の友人も超はまって、旅行先にまで本を持ってきてました。あのハードカバーを!私も読みたいんですが、今さら買うのも・・・・って感じで。そんな時図書館にあった別冊。漫画(ふる鳥弥生さんの方)は読んでたんで、まあ、基礎はできてるかなあ~とか思いながら借りてきました。
ベタ甘ラブコメとは知っていましたが。身をもって体験していましたが。両思いになってからは、漫画のような恋人イベント続出なんだ~、と笑けました。チューでお泊りで、カレシの部屋で、両親にご挨拶して、同棲するなら結婚しようぜ!と。はは・・・。これだけ丸々一冊だと、のろけだけ聞かされて正直しんどいところを、図書館の事件エピソードに大分救われました。
堂上は、結構いい男なはず。ぶっきらぼうだけど、いざって時に優しいし、実は彼女にベタボレとか、私のツボを押さえているハズなのに、なぜかはまりませんでした。なんでー?小牧はね、もとからタイプじゃないから。(えらそうに。笑。)意外に手塚に胸キュンでした。すごくいい奴ですよね。芝崎と上手くいくといいなあ。
郁はかわいいけど、ちょっとあざとい。というのは同性目線だからでしょうか!かわいくなれない女のひがみでしょうか!「二十六歳純粋培養乙女・茨城県産」にはうけた。ぴ、ぴったり・・・。あと返り血あびて、いい顔して笑うとこも良かったなー。
なんか、斜に構えて読んでしまったのが敗因かしら。恋愛サイドはそんな感じでしたが、笑いの部分はおもしろかったし、図書館を巡る事件も小技がきいていて、ただのつけあわせって感じがしなくて良かったです。さて、次は本編が先か、Ⅱが先か。どっちでもいっか。
今ちらっと調べたら、ふる鳥さんの漫画打ち切りになったそうで。残念~。