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読書の記録です。

「海の底」

有川浩/角川書店

4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地を、巨大な赤い甲殻類の大群が襲う。自衛官は救出した子供たちと潜水艦「きりしお」へ立てこもる。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく。

自衛隊三部作の「海」の巻。
予想以上に序盤の展開が早く、驚きました。のどかな空気が一変!
子供たちは、一番年上の望が高3で、以下中学生、小学生という面子。一方自衛官は、幹部候補生の冬原と夏木。私、彼らは25、6くらいかなあと思っていたのですが、17の5、6コ上ってーと、22、3で、私の予想より若いことが判明してびっくり~。キャリア組ってことは大卒だから、入隊後すぐか1年くらいでこんなに部下とかつくんだ~。自衛隊のことはようわからんのですが。
潜水艦、といっても、物語中ほとんど停泊中でして、主に子供たちと2人の交流(バトルともいう)がメイン。うーん、正直、子供への大人気ないお説教は受け付けない気分だったので、レガリスと機動隊の熱き戦いを楽しんでいました。しかし、こちらは自衛隊が出てきたら、すぐに撃墜されまして。「あれっ?あんなに手ごわかったのに?」みたいな肩すかし。あの犠牲者たちはなんだったのか?隊長が浮かばれない!私も機動隊と一緒に脱力感を覚えずにはいられませんでした。だからこそ、実権を握っている上の人たちの、的確で迅速な判断が大切なんだよなあと思った。くだらない縄張り争いをしているところなんて、現実と同じじゃないだろうか。
私は、「クジラの彼」を先に読んでまして、冬原と夏木にはすでに一度会っているはず。なのに、夏木の話を全然覚えてないっ!インパクト無かったのかなあ。冬原はね、ばっちり覚えてますよ。だって、かっこ良かったもん。でも、この本を読んで、ちょっと失望したかなあ。中学生たちのおいたが許せないってのも良くわかるんだけど、いかんせん、2人ともお説教がネチネチしていて陰険!こんな男の人ヤダ!って、ずっと思ってました。笑。望ちゃん、それ5割増しだから。絶対5割増しだから!って最後まで思ってました。彼女も彼女でスゴイ執念だよね~。コワイねー・・・。
レガリスの進化の過程や、習性など設定はおもしろかったのですが・・・。最後は尻すぼみだったのが残念。
あ、おまけの「前夜祭」は、いい大人が馬鹿みたいにはしゃいでておもしろかった!2人は、馬鹿をやって怒られているほうが「らしい」感じがしますよね。少年って感じで。


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「ファミリーポートレイト」

桜庭一樹/講談社

あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。呪いのように。親子、だもの。ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。

血の呪いと書いて家族と読む。そんな話。
コマコにとってマコは全てであり、彼女の世界の神のような存在。かなり屈折していますが、「私の男」で描かれた親子関係よりは、まだ許せるかなあ。なんだかんだで、母親は娘を大事に思っていたんじゃないかなあと思うので。母親の影響は、彼女がいなくなってからもコマコを長い間束縛します。傍から見れば束縛なんですが、コマコにとっては幸せな思い出で、それが他人と親子の違いかしら、と思った。
物語は、マコとコマコの逃避行・コマコの幼少時を描いた「ファミリーポートレイト」とマコの死後・コマコの思春期~妊娠までを描いた「セルフポートレイト」の2部から成っています。母親は付き合っていた男を殺し、コマコ(駒子)を連れて逃亡。あちこち転々とするけれど、駒子の父親に見つかったため池に飛び込み失踪。死体はあがっておらず、生死は不明。その後、父親に引き取られた駒子は、家に寄り付かず学校で寝泊りし、卒業してからは文壇バーで暮らす。幼少の頃から、物語の世界に魅せられていた駒子は、自分で物語を語るようになり、ある新人賞に選ばれ作家としての人生を歩む。5歳から34歳までの波乱万丈すぎる半生。
あんた、よく生きていたなあと。そんな感慨を感じるほど危なっかしかった。酔っ払いが崖っぷちをふらふら歩いているような感じ。作家の極限状態は、ただすごいなあと感心するばかりでした。ものを産み落とす作業って、本当に身を削るようなものなんだ。
夜は床でとぐろを巻くようにしか眠れず、恋人に抱きしめられて過ごす夜は落ち着かない。真田が彼女を一生懸命諭す姿は、いいなあと思いました。駒子はずっと本質はコマコのままなのだろうけど、2人が歩み寄って妥協点を探しながら一緒になったのは意外であり、うらやましくもありました。理想的。
最後に、「いろいろ大丈夫。愛することとか。」と言う駒子は、きっと本当に大丈夫なんだと思った。


「狼煙を上げろ。」

「神さまに届くぐらい。高く、高くにだ。」

「地獄の底から叫ぶのだ。」


「我が心求めよ悪魔」

秋田禎信/富士見書房

蟲の剣を奪われ、ロッテーシャはエドにより重傷を負った。成り行きでロッテも一行に加わり、自治都市アーバンラマを訪れる。様々な思惑が入り乱れる中、オーフェンたちは再びライアンとヘルパートの奇襲を受ける。

ウィノナが出てきましたな~。いたな~、こんな人~。最近こんなのばっかりだ~。もう、すでに物語を見失いつつあります。
前巻でばっさり殺られてしまったロッテさんの怨念がこもりにこもってまして、本筋を見失いそうになりますね。なんか、ホントはヨリを戻したいんじゃないかな~。と想像してみる。指摘したって認めやしない頑固者っぽい。しかし、ロッテの全裸にふいをつかれるなんて、オーフェンったらやっぱり初心ねえ・・・。このラッキースケベ!・・・とか言ってる場合じゃない展開なんですけど。ロッテさんのこの行動は、さんざん世話になったのに、恩を仇で返すようなやりかたで感心できない。
本筋は、ドラゴン種族とコルゴンが属する領主派との戦いに、オーフェンは巻き込まれてゆく、といったところでしょうか。オーフェンとクリーオウ、マジクは分断され、クリーオウとマジクはライアンの罠にかかります。クリーオウの意識は一体どこへ?そしてマジクはどうなってしまったのか?アスラリエルが街中に出現した意図とは?そして、最大の謎は、コルゴン何考えてんのさ?わからない人だよ・・・。
最近、本当にマジクが報われない。笑。驚異的なスピードで魔術の腕を上げているのに、まったくの役立たず呼ばわりされてるし・・・。チャイルドマン教室の生徒はもちろん、ドラゴン種族は最強だもんなー。まわりが強すぎるんだよねえ・・・。ホント、ついてないよね・・・。
ティッシ姉さん、やっと再登場!


「・・・・・・あなたは、エドと同じです」

「わたしに優しくない」


「ブラザー・サン シスター・ムーン」

恩田陸/河出書房新社

ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを。本と映画と音楽…それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生。

恩田さんの得意技のひとつに、「何でもないことを、なんだかよくわからないけど、ものすごく勿体つけて語って雰囲気を出す」があると思います。要約すると、話は3行で終了、みたいな感じ。これがそうなんですけど。課外授業で訪れた謎の町とか、ヘビの話なんか何のオチもないですよねえ。そもそも、この本自体がオチなしという・・・。ふくらし粉で一冊できあがっちゃった感があります。そんな話。
高校時代の課外授業がきっかけで、よくつるむようになった男女3人が、高校~大学時代を回想する話。紅一点、楡崎綾音は現在小説家(たぶん)。戸崎衛はメーカーに勤める会社員。箱崎一は映画監督。大学生活の4年間とは、一体自分にとってどのような意味を持っているのか・・・。別々の人生を歩んでいる彼らが、共通の出来事を色々な視点で捉えているところがおもしろいなあと思った。特に、綾音の淡白さに。衛も一も綾音のことが好きで、ちょっと当時の気持ちを引きずっているところがあるんだけど、綾音はもう昔何かあったな~程度。一に関してはノータッチ。笑。この女の残酷な冷たさが私は好きよ!
大学時代、一度も3人で会わなかったというところは、ちょっと変な三角関係が関係しているのかなあと思った。ハコちゃんの奥さんは、綾音かなーと一瞬思ったのですが、現在の勤め先は金融関係ではないし、綾音が前の職場にいた時に彼女を介して知り合ったのか、それとも全く別ルートか・・・。なぜこんなに考えているのか・・・。それが一番謎だ・・・。
1人の人生を道に例えるならば、それは寄り添うことはあっても、重なることはない、のだなあ。


「私たちは、別れるために出会ったのね」





題名から、映画よりも「太陽とシスコムーン」を連想してしまうあたり、芸術性のカケラもない自分にがっかり・・・。
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「陰陽屋へようこそ」

天野頌子/ポプラ社

王子稲荷に見守られるのんきな商店街にある日現れたあやしい店、陰陽屋。店主とアルバイトのへっぽこコンビがお悩み解決いたします。

なんか、イメージと全然違いました・・・。もっと美人なお姉さんが出てくる、大人の男女のかっこいい式神対決を想像していました。何を根拠に陰陽師=大人の男女なのかは不明ですが。笑。読み終わった後で気がついたのだけれど、ポプラ社って児童書籍がメインの出版社だっけ・・・?まあ、そんなノリの話です。
主人公は化け狐の少年、瞬太。彼が暮らす町の商店街に、陰陽屋という占い屋がオープン。占い好きの母親に連れられて陰陽屋を訪れた瞬太は、自称陰陽師・安倍祥明に正体を見破られ、口封じの代わりにアルバイトをすることになる・・・。この、陰陽屋に訪れる人たちからの依頼が物語の核となっています。祥明はインチキ陰陽師なので、占いではなく、ホスト時代に培った話術でこれを乗り切ります。家庭の不和はどこにでもある話で、いちいち気に病むなとか。
まあ、一つ一つのエピソードよりも、瞬太をめぐるクラスメートの関係や、祥明の家庭の事情などの方がおもしろかったなあという気がします。瞬太本人は、化け狐である自分の正体を、うまく隠せていると思ってるんだけど、みんなにはバレバレなところとか。瞬太くん、とにかく素直でかわいいのです。今時、こんなかわいい中3男子いません!母親は嬉しいだろうな~。反対に、祥明の母親はかなりの傍若無人っぷりにひいた・・・。彼は結構意地が悪いなあと感じることがあったのですが、その歪みはここからきたのか!と。
祥明は、実は本当は、由緒正しき陰陽師の家柄かなんかで、霊感も占いも本物というオチなんやわーと思っていたけれど、違うんですねえ。がっかりー。卒論のための勉強と、実際の修行は違いますもん。結局インチキか!