忍者ブログ
読書の記録です。

「我が聖都を濡らせ血涙」

秋田禎信/富士見書房

メッチェンの助力を得て、キムラックへの潜入に成功したオーフェン一行。アザリーは必ずユグドラル神殿へ現れる、という確信を持って、オーフェンも神殿へ向かうが、彼の前に死の教師が立ちふさがる。

秋田禎信Boxを入手してきました!・・・でも読めない!まだ読めないの!という生殺し状態が続いています。2月くらいにはオーフェンの巻が読めるだろうか・・・。
さて、今回はキムラック編に突入!白オーフェン。
マジクも反抗期に突入。「ハチクロ」でいうところの、青春スーツを着こんでもこもこな感じ。もこもこマジク。無力で何も知らない恥ずかしい自分から脱しようと、師に色々食ってかかるわけですが、これがまた「きゃっ!恥ずかしい!」状態に。読んでる当時は、マジク寄りでしたから(笑)オーフェンは、マジクの才能に嫉妬しているに違いない的な印象だったような記憶があります。今読むと、オーフェンの主な関心はあくまでアザリーじゃん、と。笑。
幕間で語られる、イスターシバと彼との会話。彼が、ああ彼か!と思って読むとおもしろさ倍増ですね。と言いつつ、やっぱり大陸の歴史関係には弱いです、私。
キムラックから出られるのは死の教師だけ、という排他的な制度はなるほどなあと。それで、混血である魔術士を毛嫌いしているのか。こういった教義の設定が非常に緻密で、オーフェンシリーズの大きな魅力だと思います。
ラニオットの正体は、大体覚えていたのですが、地下道で鉄砲水に流された後の種明かしシーンは何度読んでもおもしろいなあ。ネイムの血の涙は、夢に見そうなほど怖い。あの挿絵を見ると、ぞっとします。本当にこわいよー。クリーオウもピンチで、シリアスな空気が・・・。クリーオウが元気がないと、なんだか物足りないー。
オーフェンが人を殺してしまった、衝撃の展開。「ヒーローは人殺しをしない」という不文律が崩れた瞬間。オーフェンはこれから先も人を殺さずに勝利していくのだと思っていた。だからこそ、この後描かれるオーフェンの苦悩に、私は寄り添うことができたのではないかと思う。
いよいよ西部編、クライマックスへ!


「閉じ込められてなんていない」

「現在は、常に未来に出会おうと歩き続けている!」


PR

「平台がおまちかね」

大崎梢/東京創元社

自社本をたくさん売ってくれた書店を訪ねたら、何故か冷たくあしらわれ、文学賞の贈呈式では、当日、会場に受賞者が現れない…!?新人出版社営業部員の井辻くんは、波爛万丈の日々を奮闘中。

元書店員の視点が盛り込まれるせいか、大崎さんの本は、書店を舞台にしたものが一番生き生きしているような気がします。今回の主人公は、書店員さんではなく、出版社の営業さん。
本が売れるように、色々考えるのは書店員と一緒だけれど、出版社の営業にとっては、本屋さんもお客さん。あの手この手で、自社の本を売り込みます。本が好き、とは言っても、作り手のことをあまり考えたことのない私。裏話に、へー、ふーん、と頷いている内に終わっちゃったなあという感じでした。ソフト系の話が多かったからかな?ちょっぴりスパイスが効いていたのは、「贈呈式であいましょう」かな~と。基本ハッピーエンドなので、安心して読むことができました。
井辻くんが探偵役って、ちょっと意外。彼がひらめくと、「えっ、キミが?」と毎回つっこんでしまう・・・。本の世界観にのめりこむと、ジオラマまで作ってしまうマニアっぷり。いやー、それはスゴイわあ・・・、正直ちょっとひいてしまいました。ごめんよ。
営業の男性陣、がんばっていたのですが、いまいち魅力を感じなかったな~。個性的なんですけどね!濃すぎて・・・。笑。やはり、一番ときめいたのは、吉野先輩でしょう。長身のさわやか系・・・。きっと岡田将生くんみたいなイケメンに違いない・・・!と想像がふくらむふくらむ。
最後には、やはり登場した成風堂。シリーズものは、さりげないコラボが醍醐味ですねえ。ところで、井辻くんシリーズもまだ続くのか!




「茗荷谷の猫」

木内昇/平凡社

新種の桜造りに心傾ける植木職人、乱歩に惹かれ、世間から逃れ続ける四十男、開戦前の浅草で新しい映画を夢みる青年。幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を超えて、名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。

地味にプラチナ本を攻めていこう。
自分の県の地名すら怪しい私ですので、東京のことなどさっぱりさ!と胸を張って断言しておこう。よし、予防線は張った。
時代は、江戸から現代(たぶん昭和?)にかけて。あまり読まないタイプの本だったので、戸惑いながらのスタートとなりました。でも、最後まで読むと連作短編らしく各話につながりがあって、なるほど~という感じでした。ざっと感想を!
「染井の桜」。ソメイヨシノにこんなエピソードがあったらステキだな、と思った。徳造の生き方は清いと思うけれど、私にはこんな人の嫁はつとまりそうに無い。
「黒焼道話」まず黒焼って?という疑問が。彼の情熱は素晴らしいが、方向性を誤ったー!彼が真面目に黒焼の道を究めんとする姿が、あまりに滑稽でおもしろいやら悲しいやら。
「茗荷谷の猫」夫婦とはなんぞや?という話を語るには、私の経験値は足りなさ過ぎる。ただ、自然消滅は悲しい。床下に潜んでいた何かと一緒に、彼女の迷いも無くなれば良いのに。
「仲之町の大入道」松原と編集者のやり取りがおもしろい。春造は、今でも黒焼を作っているのかしらん・・・。
「隠れる」糸蚯蚓夫人!笑。たぶん、この本の中で一番コミカルな作品だと思う。嫌われようとすればするほど、気に入られてしまう展開がおもしろい。そして最後のオチも素晴らしい!
「庄助さん」戦時中。後半うるっときてしまいました。青年たちの夢や希望を犠牲にして、戦争は続いていたんだ。戦争ってそれほどの意味があるものだったのか?少なくとも、若人の未来より重要なモンではなかったことは確かだ。文枝さんの元・旦那さんの姿の消し方はずるいと思うの。
「ぽけっとの、深く」戦後。本編よりも、庄助さんが戦死したことに衝撃を受けた。復員して、映画を撮って欲しかった・・・。
「てのひら」親の老いを受け止めるのは大変だと思う。親に説教をするようにはなりたくない。いつだって、叱られる側でいたい。
「スペインタイルの家」高度経済成長期。あの靴磨きをしていた俊男くんが所帯を持っていたなんて・・・!と嬉しくなった。ゆったりとした物語の流れが安心感を誘う。しかしこの後、パチンと泡がはじけるのかと思うと、恐ろしいですねえ・・・。
思ったより猫成分が少なめだったのが残念といえば残念!


「我が遺志を伝えよ魔王」

秋田禎信/富士見書房

タフレム市からキムラックへ向かう道中、路銀はすられ、馬車は壊れ、残る食料は干し肉ひときれ。生き残りをかけた戦い(仲間割れ?)の最中、悲鳴が響き渡る。オーフェンたちは、謝礼目当てに助けに向かうが・・・。

干し肉争奪戦は、好きなシーンのひとつであります。干し肉をくわえてにんまり笑うクリーオウがステキ。絵師・草河さん、グッジョブ!この巻の表紙絵も好き~。「首から下を埋めてニワトリに目玉つつかせる」って、魔術士の使うテじゃないでしょ!?笑。ニヒルだったり、メランコリックだったり、いろんな顔を見せてくれるオーフェンですが、やはり理不尽にヒドい目にあって、ぎゃーぎゃー騒いでいるときが一番輝いているような気がします。さすが生まれながらに女難の相が出ている男!
・・・さて、干し肉は置いておいて。悲鳴の聞こえた場所に向かうと、翼の生えたワンちゃんに囲まれて、オーフェンたちは劇場に入らざるをえなくなります。劇場に侵入していたのは、なりゆきで地人兄弟も加わった盗賊団らしき一派。オーフェンは、彼らが「お頭」と呼ぶメッチェンを助けようとするが・・・。なんとメッチェン・アミックは死の教師だった!メッチェンのハチマキじゃなくて、布?の巻き方がいいなあと。前のほうでくるくるっとなっているのが。実際見るとダサイんだろうなー・・・。
キムラックに突入する前の、いわば小休止と思わせておいて、やっぱり世界観につっこんだ話となっています。いつか、魔術がつかえなくなる危機が訪れる警告?のためにつくられた、カミスンダ地下劇場。最後にちらっと出てくる魔王と女神の対話は一体何の意味があるのか?考えてみましたが、よくわかんないやー。難しい・・・。
今回、マジクの出番はあまりなく、クリーオウが大活躍!ほれてまうやろー!犬を持って帰ろうとする発想がステキすぎる。男前。オーフェンも彼女のことを相棒と認めている感じがしますねー。しかし、オーフェンとマジクの対応の違いがひどいなあ。笑。


「神ってなんだと思う?」


・・・書影が見つからない!泣。

「きのうの世界」

恩田陸/講談社

塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。一年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?誰も予想できない結末が待っている!!

町の歴史や言い伝えをミステリーに絡めてくるのは、恩田さんの得意技ですなあ。物語は、語り手を変えて、時系列を変えて、進んでいきます。舞台となるのは、「塔と水路の町」。そこで起こった、水無月橋殺人事件を調べるために“あなた”はこの町を訪れた。
この“あなた”が誰なのか、非常に気になるポイントだっただけに、あっさりしたネタばらしはちょっと物足りなかった。あんまり関係ない人だったしなあ。ただ、彼女の幼少時のエピソードはちょっとほろりとしました。いい話だっただけに、その後の過労と偏食が原因で・・・という決着のつけ方が残念だった。
本編が静ならば、クライマックスは動。ゆるやかな流れの中で、ひっそりと息を潜めている何者かがいる・・・といった雰囲気から一変します。大雨が町を襲ったあとは、突然の火災。そして明かされるすべての謎。・・・そうなんです!珍しく風呂敷がたたまれた結末となっております。まあ、カラスは正直「えー・・・」という感想でしたが。笑。結局のところ、ばーちゃんの思惑通りにことが進んだ、ということでよろしいか!孫も含め、ここの女は恐い・・・。
ところで、見たものをそのまま記憶できる特殊能力って、色んな本でぼちぼち見かけますけど、便利なようで不便!な扱いでかわいそう。自分は、暗記モノは書いて覚える人で、めっちゃ苦労するんで、単純にうらやましいなー。
そもそもの発端は、この家系から始まった。町の仕掛けは無事に作動し、災害は避けられた。けれど、市川吾郎のような宿命を背負った人間が必ずまた生まれる。この連鎖は永遠に続いてゆくのだろうか?


「心配しないでね、って言ったの。忘れないでね、じゃなくて」