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読書の記録です。

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「禁断のパンダ」

拓未司/宝島社

柴山幸太は神戸でビストロを営む新進気鋭の料理人。彼は、妻の友人の結婚披露宴で新郎の祖父である中島と知り合う。中島は人間離れした味覚を持つ有名な料理評論家であった。幸太が中島と知り合った翌日、神戸ポートタワーで一人の男性の刺殺体が発見される。

こんな動機、レクター博士だけだと思ってたよ!
このミス大賞受賞作。巻末の選評にも書いてある通り、グルメパートは本当においしそうに思えるんですが、ミステリーパートがいまいち面白みに欠けるのです・・・。なんせ、あの刑事コンビのカラーの無さと言ったら・・・!無色透明、無味無臭。地元・神戸が舞台なので、応援したいんだけど・・・、ちょっと手放しで面白いとは褒められません。
表紙といい、パンダといい、かわいらしい感じの話を想像していたら、すごいがっくりきます。笑。シュールな展開は、好きな方なのでそこは別にいいんだけれど・・・。果たして、人肉はおいしいのか?という素朴な疑問が。シェフの腕前どうこうじゃないって。カニバリズムは、現実に歴史上行われていて、罪を犯したのはパンダだけではないようです。何か宗教的な意味があったり・・・という場合もあったようですが、食べることが目的だったケースもあるそうです。えぐいぜ、人間。
食欲と言えば、七つの大罪(傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲)を思い出しました。これらはすべて人間らしい感情であると同時に、人間を悪に導く危険な感情なのです。何事も適量が一番。美味しいものを食べすぎるのも、困ったもんだ~。


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「螺鈿迷宮」

海堂尊/角川書店

落第寸前の医学生・天馬は、幼なじみの新聞記者から終末医療施設として注目される碧翠院桜宮病院への潜入を頼まれた。天馬はそこで、奇妙な皮膚科医・白鳥と看護師の姫宮に出会う。

きらきら表紙に、やっとたどり着きました~。
ちょうど、「ナイチンゲールの沈黙」の裏で展開されていた話・・・だと思います。ウザイ火喰い鳥・白鳥ももちろん登場しますが、今回は「ジェネラル・ルージュの凱旋」でも現れた氷姫・姫宮が大活躍?しています。・・・しっかし、相変わらずすごい通り名ですね~。
今回は、地域医療についての問題と、終末期医療について取り上げている模様。毎度、医療問題についてはノーコメントを貫いています。笑。すいません、海堂さん。意図は汲んでいるつもりですので。はい。
東城大学の闇の部分を担ってきた、桜宮病院の暗部を暴く!話。いきなり主人公が入院したのには驚きました。おいおい。現実的な問題と、現実からはかけ離れた桜宮病院の描写にギャップを感じたところが残念でした。普通の病院やったら、成り立たない話だったのかもしれない。しかし、なあ・・・。私の好きな世界観ではなかった。おばあちゃん3人組の描写も、いまいち・・・。赤い孫悟空、とか痛すぎですよう。
ロマンチックな独白が良く出てきます。さゆりさんも、すみれさんもえらい感傷的。こんな医者もどうかと思うけど。もはやミステリーではない。森博嗣さんと同じく。ただ、氏と違うのは、センスだろうなあ。申し訳ないけど、海堂さんのは詩的ではなく、ただ単にクサい台詞を並べているだけなのです。今回は、ミステリーパートがおもしろくなかっただけに、辛かったな~。
田口先生は、おいしいところだけかっさらっていたしな・・・。


「裁縫師」

小池昌代/角川書店

広大なお屋敷の鬱蒼とした庭の離れに、アトリエを構えるひとりの裁縫師。ある日、9歳の「わたし」は、自分の服をあつらえてもらうために、母に連れられて裁縫師のもとを訪れる(「裁縫師」)。詩情とエロティシズムあふれる5篇を収めた珠玉の小説集。

ダ・ヴィンチのプラチナ本で紹介されていた本です。表紙がキレイ。地味ーにプラチナ本を制覇していこうという計画が、今、立てられた・・・!(ナレーション風)
各話ごとに、ちょちょいと感想を。
「裁縫師」。一番エロい。笑。女はまさに、生まれた時から死ぬその時まで、女以外の何者でもないのだなあ、と思った。私、ロリコン嫌いなんだなあ・・・と再確認した話でもあった。オーダーメイドの服って、憧れます。生地の手触りが伝わってくるような、静謐な雰囲気。
「女神」。この話は結構好き。ある町に魅入られて、移住してきた「ぼく」。そこで、彼は町の女神と言われる女性に心を奪われる。まるで、昔話で教訓めいた話を読んでいる気持ちだった。結局、祭りの夜に彼が愛を交わした女性とは何者だったのか・・・。っていうか、人だったのか・・・?
「空港」。お正月に、叔母から叔父の出迎えを頼まれる。断りきれず、洋子は空港へと向かうのだった。しかし、現れた叔父は・・・。叔父は・・・!何かの幻だと言ってー、というオチ。結局、淡い気持ちを踏みにじられるためだけに、空港行ったんかい!私の中の孤独を、呼び覚ます話。
「左胸」。オチが一番キレイにまとまっている作品。犬スキーとしては、犬だけでも助けて欲しかった・・・!私は、自分が思っているよりも、人間の形に縛られているなーと思った。
「野ばら」。女の子が不憫、の一言に尽きる。美知子は、確かに自由を手に入れたかもしれないが、家から離れられないというのは、一種の不自由ではないだろうか?家を出て行った家族も、逃れられない何かを持っていると思う。しがらみの無い生なんて、無い。
事実をそのまま記憶することは出来ない。だから、思い出は、甘い。


「ルピナス探偵団の憂愁」

津原泰水/東京創元社

高校時代から、「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた、三人の少女と少年一人。うち一人が二十五の若さで世を去った。そして彼女が死を前に造らせた、奇妙な小路の謎が残された…。

実は先に1冊あったらしい!内容的には問題無かったけど・・・。最近、こんなんばっかりかも。思いつきで読む本を選ぶと、こうなるのかしらん。
「ルピナス探偵団」のメンバーは、社会人になり、それぞれの道を歩んでいたが、メンバーの1人の死をきっかけに、集合することになる。彼女の死自体が謎ではなく(死因は病気)、死ぬ前に、彼女が固執していた裏庭についての謎だった。それは、彼女の生い立ちと関係があるものだった・・・。という1話から、年月はだんだん遡ってゆきます。第2話と第3話は、大学生時代。第4話は高校卒業時。第1話がしんみりとしていただけに、最後のシーンも感慨深いものがあったと思う。
津原さんの本は初読なのですが、読みやすいと思わせて、実は読む側のテンポが狂うというか・・・。狂ってるの私だけかもしれないけど・・・。説明しにくいのですが、内容に関してでなく、文章の構成上「あれっ?」と思うところがいくつかあるという感じ。特に第3話「初めての密室」は、最後のぶつぎりっぷりがすごい・・・。
好きなのは、やはり第4話「慈悲の花園」。やはり本の構成の勝利かと。あとは、犬好きとして第2話「犬には歓迎されざる」を挙げたいと思います。この話も最後は「むむむ?」って感じだったなあ・・・。
彩子と祀島の関係が良かった。この、うまくいきそうで、たぶんずっといい友達で終わりそうなところがな!(←性格悪)あと、自由奔放な姉ちゃんがいいなあと。警察関係者、こんなにおもしろい人がいたら、世の中も少しは変わるのではないかしらん。
あとは、蛇足の話。
図書館で借りた本って、いろんなものが挟まっていることがありますよね。自分もごくたまにするのですが、しおり代わりに、メモをはさんだりした名残りかなあと思っていました。今回は、落ち葉がねえ、すごいきれいに原型を保ってはさんであったんです。落ち葉のしおり・・・。現代に、まだこんな文学少女が残されていたなんて・・・!遺産だ、世界遺産だ!


「フライ,ダディ,フライ」

金城一紀/角川書店

鈴木一、47歳。いたって平凡なサラリーマン。一人娘を不良高校生に傷つけられ、刃物を手に復讐に向かった先で鈴木が出会ったのは、ザ・ゾンビーズの面々だった!脆くも崩れてしまった世界の中ではたして鈴木は大切なものを取り戻せるのか。

いつの間に、ザ・ゾンビーズという名前が・・・。
金城さんは未読だったのですが、なぜか、難しそうな本というイメージが張り付いていました。この本は、そのイメージを払拭してくれました。やはり先入観って危険だわ~。とても読みやすかったです!
本は未読だったのですが、ずっと前に映画は見たことがあったので、だいたいの話の流れは知っていた。本と映画は、あらすじは大きく違うところもなく、一緒だと思いました。ただ、本の方は、より高校生(ゾンビーズ)の面々をクローズアップしているなあという印象を受けました。山下君なんか、映画ではこんなに印象に残らなかったと思う・・・。
現実、こんなにわかりやすい勧善懲悪って無いよなあと思ってしまいましたが、最後はとても爽快でした。なんだかんだ言って、分かりやすいのは好きです。笑。
朴くんと鈴木さんの交流はとても良かった。本当の親子より親子らしいというか。私はもちろん、格闘技などやったことがないのですが、闘いの中で、純粋に強さのみを追求するのって難しいのかもしれないと感じました。相手に対する憎しみがあればなおさら。そこに、踏みにじることへの悦びや優越感がどうしても出てくるのだもの。だから、それを乗り越えた朴くんや鈴木さんが、とても高貴に見えるのかもしれない。空を飛べるくらいに。