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読書の記録です。

「断章のグリムⅠ」

甲田学人/メディアワークス

普通であることが信条の白野蒼衣と、過去を引きずりつつ悪夢と戦う時槻雪乃。人間の狂気が生み出した灰かぶりの悪夢の中で出会った二人が辿る物語とは!?

これは、まんまと表紙に騙されました・・・!表紙買いだったのですが、モノクロが全然好みでなかったのです。しばらくほったらかし。(←ひどい)
しかしながら、童話(に限らず、民話とか)モチーフは好きなので、この機会(一人開催した夏のラノベ読もうキャンペーン)にえいやっと読みました。そしたら、これがおもしろかったんです。
世界の怪現象は、<神の悪夢>の欠片である。そして、悪夢の泡が人間の意識に浮かび上がると、現実世界を変質させ、悪夢の物語を作り上げる。という世界観がいい。まあ、悪夢の泡が大きいと、それが童話や昔話のエピソードと似たものになる、というくだりまでいくと、「なんでそうなるの?」と言いたくなってしまうのですが!それを言うと、この小説そのものを否定してしまうことに・・・。この疑問は忘れることにしよう。
登場人物は、まだまだ個性が薄く、印象に残らなかった。かろうじて、颯姫さんの耳から出てくる虫が、すごかったかなと。
それよりも、内気な少女が、優しくしてもらった男の子に淡い思いを抱いて、偶然美少女と一緒にいるところを目撃して落ち込むという、あのパターンが良かった!久しぶりに見た!笑。
童話のモチーフも、「本当は恐ろしいグリム童話」のように、想像以上にグロい展開でした。「本当は恐ろしい~」で、一番インパクトが強かったのが、ロリコンの七人の小人と、生きたまま焼き殺される人魚姫でした。ま、まあ、その領域までは行ってないのですが、スプーンで目玉をえぐっちゃったりはしています・・・。痛いのは苦手・・・ですが、人の心の闇を描く作品は好きなので、続きも読もうかなーと思っています。今のところ、グリム路線が続いているようですね。かちかち山とかやらないかなー。あれもシュールで好きなんです。


「<私の痛みよ、世界を焼け>!!」


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「GosickⅢ」

桜庭一樹/富士見書房

一弥は、風邪をひいたヴィクトリカをおいて、ソヴュール王国の首都ソヴレムを訪れる。巨大な高級デパート「ジャンタン」で買い物をする彼は、闇の奥に光る人形の瞳を目撃する。動き出すマネキン。消える人々。一弥は独り、謎に挑む。

今作でも、ヴィクトリカはめっちゃかわいかった~。口絵がどれもプリチーです。つま先立ちー。きれいなものにうっとりする姿も、カゼで苦しんでいる姿も良いですな。この年まで風邪をひいたことが無いって・・・、どんだけの箱入りさんなのでしょうか。くしゃみが、「ぐじゃ!」と表現されているのを初めて見たような気がする・・・。独特だー。
さてさて今回は、ヴィクトリカが風邪でダウンして、一弥君ひとりぼっちの冒険となったわけですが!ちゃんと電話でのやりとりや、ヴィクトリカパートも用意されていて、物足りないということはなかったです。しかし、久城君、見事なまでの鈍感っぷり。さすが日本男児。おもしろいんだけどさ。
謎解きは易しかったのですが、「ジャンタン」の模様替えや、しらばっくれる店員とか、あのあたりの展開が良かったなあ。はらはらしました。人身売買の怪談の話は、私も見たことがあるなあ。あれは、中国?海外旅行に行く予定は無いけれど、海外の試着室には絶対入らないでおこうと心に決めましたね。鏡の裏が隠し通路になってるんだよー。そこから連れ去られるんだよー。がくぶる。
そして、謎解き以上のサプライズが警部の髪形。1巻の時といい、この人は本筋と関係ないところで大きな驚きをもたらしてくれます。なぜだ。ロマンティックな面が明らかになったところは、プラスです。
ああ、私もウサギやらクマの棒付きキャンディが食べたい~。


「<わたしを絶望させたいなら、悪魔的な要求はこう告げるべきだ。もうジャクリーヌを愛すな、と>」


「イヴは夜明けに微笑んで」

細音啓/富士見書房

名詠式の専修学校に通うクルーエルは、年下の転校生で、異端の夜色名詠を学ぶネイトに興味を抱く。一方、学校を訪れた虹色名詠士・カインツもまた、夜色名詠の使い手を探していた。

第18回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。
名詠という技術が、一体どれだけ役に立つものなのか、疑問に思っていました。後半になって、こういう使い方なのかーと納得した次第。いや、だってさ、絵の具を媒体にして花出そうがカエル出そうが・・・って感じしません?しかも、こう、長々と歌を歌っている間に、やられてしまいそうだ。笑。
後半の、イブマリーとカインツの同級生で今の先生たちの熱き戦いが良かったです。年を経て、こうやって再会できるっていいなあ。しかも、良い感じに成長してたりしてるから、尚うらやましいですな。
えー、主人公コンビの方は、ネイトは応援してあげたいタイプで、ずっとがんばれよーって感じでした。が、クルルさんの方が、私の嫌いなタイプの人種でして。「うわー、この子苦手!」と思う場面が多々あり、非常に残念でした。面倒見のいい人にも、何パターンかありますけど、彼女の親切は非常に押し付けがましい。
カインツ様がかっこ良かったー。気がついたら、もう3巻まで出ているようなのですが、カインツ様が出るなら読みたい。アーマも、もう一回出るかしら?むー、本当に最近のラノベは発行ペースが早いなあ(笑)。


「精霊の守り人」

上橋菜穂子/新潮社

女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。

新潮文庫の100冊よりチョイス。
読後、インターネット配信されていたアニメを見ました。オープニングのラルクの曲にげんなりしてしまい、本編は見ずじまいでした。あまりにも、私のイメージとはかけ離れている・・・。
舞台は、アジア、例えば中国のような広大な土地をイメージしていました。きちんと民俗の伝承や、歴史に踏み込んだ考察がなされているなあという印象を受けました。かといって、難解かというと、そうではなく、わかりやすい言葉と表現で文章が構成されています。なるほど、これがどの世代にも受け入れられた理由か。
初期チャグムの「~じゃ」喋りがかわいかった。おんぶとか。うーん、全力で甘えられる大人が側にいるということは、幸せなことだよな・・・。預けられたのが、バルサで良かったなーとしみじみ。
チャグムとバルサの交流がとにかくいいんだわ。バルサの包容力は、大人ならではのもの。でも、バルサはバルサで、抱えている悩みや葛藤があって、それをチャグムとの交流の中で見つめなおしていく。まあ、バルサとタンダの関係は、もうすでに落ち着いた空気をかもし出しているので。笑。このままうまくいくんだろうな、という気がします。
最後は、何を勝手なことを!と思ったものですが、ニュンガ・ロ・イムと同じく、それが王族に生まれついた彼の荷物なのだろうなあ。彼だけではなく、物語の登場人物たちも、そして現実世界に生きている私たちも、何かしらの荷物を背負っていかなければならない。それを、荷物だと思わないことなんて、できるのだろうか。


「「おまえがたすかって、ほんとうに良かった。まにあって、ほんとうによかった。」
 それを聞いたとたん、心の底から身体全体に、じんわりと熱いなにかがひろがってきた。
(たすかったんじゃない。-たすけられたんだ)
 ふいに、その思いが強く心に迫ってきた。卵の欲求を感じていた自分でさえ、自分を犠牲にして卵をたすけよう、とは、なかなか思えなかった。それなのに、あの恐怖の中へ、この人びとは、みずからとびこんできてくれたのだ。
 皇子だった頃、彼は、守られるのがあたりまえだと思っていた。けれど、いまは、それがいかにあたりまえでないかが、よくわかった。
 チャグムは、よいほうの腕をバルサの首にまわし、ぎゅっと抱きついた。
「ありがとう」
それ以外なにもいえなかった。」


「交響詩篇エウレカセブン 4」

杉原智則/角川書店

連邦首都からの脱出、世界の存亡を巡るエウレカの謎、新たなボードを得て蘇ったニルヴァーシュ。めまぐるしく動く状況のなか、事態はデューイの野望により加速する!少年と少女は互いの絆を武器に“ゾーン”へ最後の戦いに挑む!!

忘れてたわけではないのですが、今更の最終巻です。ぎゃー、ほったらかしててごめんなさい~。
アニメ版のエンディングがどんなもんやったか、当時後半勤務の関係で見れない回もあったりして、記憶があいまいなのですが・・・。ただ、やっぱり私は小説の(解釈)の方がわかりやすかったなー、と思います。特に、コーラリアンの謎が良かったです。人類は、脱出したつもりで、一回りして帰ってきただけだった、という馬鹿馬鹿しさが好きだ。そして、今の環境破壊とだぶるようなテーマ性も感じられました。きっと、今私たちが住んでいる地球も、形は違うけれども、同じように生きるものを理解しようとしているし、何かの形でメッセージを送ってくれているはずなんだ。
小説版のエンディングの方が私は好きですね。第一期のOPを思い出したわー。逆に、アネモネとドミニクのカップルは盛り上がりませんでしたね。控えめ。笑。何故、アニメのエンディングが好きじゃないかってーと、今まで好き勝手してきたレントンがだな、さらに3人の子供をじっちゃんに預けてエウレカのもとに走ったというあの構図が受け入れがたかったのです。あと、相合傘もなんだかな・・・。まあ、とにかく、恋する少年少女はすさまじいパワーを放っています。お年頃のみんな、ステキな恋をして下さいまし。
アニメは、私にニルヴァーシュの軽やかな踊りと、色鮮やかな世界を魅せてくれた。小説は、世界の成り立ちと論理を易しく教えてくれた。マンガは・・・途中で読むのをやめちゃったけど・・・。様々なメディアで1つの大きな世界が完成したような気がします。


「きみとなら、できる」