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読書の記録です。

「“文学少女”と死にたがりの道化」

野村美月/エンターブレイン

何故か文芸部に持ち込まれた恋文の代筆の依頼。物語を食べちゃうくらい深く愛している天野遠子と、平穏を愛する井上心葉。ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な“お化け”の嘆きと絶望の物語だった。

若い。そして、青い!
「何も感じない」と悩んでいる時点で、もうすでに君は人間らしいのよ。そして、他人の心がわからないのなんて当然で、だからこそ理解したいと近づいていくものなのではないでしょうか。というか、本当に「悲しくない」のなら、死んだ人のことなどすぐに忘れてしまうだろうし、そのことで自分に絶望することだってないはず。いやー、そんなことでうじうじ悩むヒマがあっていいねえ。若いっていいねえ、と嫌味のひとつもふたつも言いたくなりますってば。それくらいで死ぬ死なない言われても、ねえ。笑。
・・・と、物語全体のモチーフは気に入らないのですが、遠子先輩がとにかく良い。最後まで、この人は人間なのか妖怪なのかわからず終いだったんだけど・・・。人間だと思っておきます。物語を、味に例えて表現したり、太宰について熱く語ったり・・・。かわいい!私、みつあみ好きですし。ああ、でも、紙を食べるのは消化に悪そうです。遠子先輩の文学への思いは、著者の野村さんの思いが反映されているものだと思います。本への愛は本当に素敵。「グレート・ギャツビー」って、本屋で大量に積まれてるのを見たんですが、今流行ってるのかな。気になるかも。
心葉君の思わせぶりエピソードは挟み方があざとく、露骨。うーん、何となく登場人物全体に、ナルシズムな空気を感じます。私って、こんな過去があるのよ、すごいでしょう。かわいそうでしょう。みたいな。不幸自慢は幸せ自慢より嫌いだな。


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