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読書の記録です。

「ほしのはじまり」

星新一(新井素子:編)/角川書店

全世界で、あるいは全宇宙で永遠に読み継がれるべきマスターピース集。これ1冊で、星新一作品世界のすべてがわかる。星チルドレンの旗手・新井素子が選ぶショートショートの最高傑作54。

私の中で、ショートショートといえば、星新一か阿刀田高。ショートショートは苦手で、あまり読まないせいか、ぱっと作者が出てこない・・・。そもそも、私がショートショートが苦手になったきっかけは、星新一さんの「未来いそっぷ」でした。小学生くらいの時に、ショートショートというジャンルも、星さんも知らず、ただ表紙のキリギリスがかわいいという理由だけで読んだ本。意味がわからなくて、なんだか読後感が気持ち悪いと思ったのを覚えています。そして約20年が経ってから、どうして星新一を読もうと思ったのか謎です。笑。でも、おもしろかったなあ。きっと、編者の新井素子さんの解説と、愛ある構成のおかげだと思います。テーマごとに作品が集められていて、なじみやすかったというか。
びっくりしたのは、話を覚えていたこと。「少年と両親」と「おーい でてこーい」「いそっぷ村の繁栄」も。大人になった今読むと、これらの作品は人間の風刺画のように見えるのです。特に、ベタな結末ですが「おーい でてこーい」はとても好きです。
5章と6章の作品が好みでした。人間という生き物の性を描いているところが好きなのかな。「殉教」なんか良かったですねえ。あの、流されやすいところが人間ですよね。信用しちゃうんだ!っていう。読んでいる途中はいまいちだったのですが、余韻が残るのは「殿さまの日」。お殿様があーだこーだ考えていることなのですが、何も考えていないようなお殿様が、こんなに周りに配慮して生活していたとしたら・・・。と見る目が変わりそう。「花とひみつ」では、数々の偶然の結果、勘違いした研究者たちがロボットのモグラを開発した話。得意そうにモグラをさしだす所長がかわいらしい。笑。
星さんの作品には、「実はどこかのスパイ」とか「実は殺し屋」「実は組織のボス」「実は・・・」っていう裏の職業を持っている人がたくさん登場します。ありえないけど、そこがおもしろいのかも。
「ほしくずのかご」では、漢字とひらがなの全体的なバランスのこだわりの話が興味深かった。読みやすいし、ページを遠目に眺めてもきれいに見えるような気がするのは、このせいかな。気のせいかな?手元に1冊置いておきたい本です。オススメ。


「なにもいらない。いまのわたしに必要なのは思い出だけだ。それは持っている」


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