「リカーシブル」
父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る。
表紙が近未来的な感じで、SFのような話かな?と思っていたら、全く違いました。高速道路をイメージしてるのかな・・・。この表紙から、この話を予測できる人はいないでしょう。
物語は、ある親子が小さな町に引越してきたところから始まります。その町は、母の故郷であり、高速道路の誘致に再生をかける小さな町。友人のリンカとも知り合い、町の生活に慣れようとする姉・ハルカ。しかし、弟のサトルが未来を予言するかのような発言をするようになる。ハルカは、町に伝わる昔話に登場するタマナヒメと類似する点を見つけ、サトルに起こっている現象を解明しようとするが・・・。
高速道路の誘致の陰で行われていた様々な工作。巻き込まれた子供。閉鎖的な町の話になると、理解しがたい価値観が出てくるもんです。
ラストの急展開の夜を迎えるまでは、非常にまったりとした進行です。まったりしすぎてつまらなかった。笑。まったりした話の中にも、ちゃんと伏線はあったのですが・・・。何しろ、ハルカが普通にいい子なもんで、彼女の一人称ではインパクトが無かったせいかなと思います。
しかし、このハルカさん、父親が失踪しただけではなく、母親は義理だし、弟は連れ子で血のつながりはないしで、結構過酷な状況に置かれています。彼女がいい子なだけではなく、しっかりしていて、機転が利くのはこの複雑な状況から培われたものなのかしら。反対にサトルは泣き虫で・・・特にいいとこなしだった。
タマナヒメについて説明不足だった点が残念。先代のタマナヒメ(サクラ)が亡くなったのが5年前だとしたら、今のタマナヒメのリンカに霊魂(?)が乗り移ったのは4・5年前ってこと?なら、タマナヒメの霊魂が乗り移る前は、在原リンカという人間が自我を持って生きていたということになりますよね。小学2年生か3年生まで。肉体が滅びてもタマナヒメの魂は残り、また誰かに憑依する・・・。そうやって永遠に魂は残るのだから、肉体の死を恐れないというタマナヒメの理屈はわかったけど、憑依された女性の人生はどうなるんやと。そもそも、タマナヒメが憑依した時点で、もともとの人格がどうなるのかもよくわからないし・・・。あのリンカはタマナヒメなのか、リンカの部分も少しは残っているのか・・・などなど謎でした。最後は、「私も色々大変なのよ」の一言で済ませてしまったという。ねじふせられちゃった。
リンカや講(という町の互助会)の面々も結構ブラックでしたが、ブラック米澤さんが降臨したのは、離婚届けが送られてきてからの義母の本性でしょう!中学校卒業までは置いてあげるとか、親戚の家に行けとか、家に生活費を入れろとか・・・。態度が控えめでも、結局言いたいことはこういうことですからねー。離婚したら、そりゃ相手の子供は他人だけど・・・。それなら最初から優しくなんてしなければいいのに!いやー、腹黒いです。このシーンだけで結構満足な私。
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