「僕たちは歩かない」
ある雪の夜、東京で、レストランで、あるいは山手線で、時間のひずみに入り込んでいく人たち。不思議なやわらかい雰囲気は、次第に緊張感に変わっていく。奇跡の物語を、美しい挿絵とともに描いていく。
私は、3次元の世界にでも入り込んだのかと解釈したのですが・・・。たぶん、実際に不思議ワールドに入り込んだんだろうな。「僕たち」は料理人を目指す若者たち。ひたむきな情熱を持って、いつか一流のシェフになるために、26時間の東京のキッチンで鍛錬を積んでいる。怖いほどの自信と野望に満ちている彼らが、私は怖かった。職人を目指す人は、こうでないといかんのだな。うーん。
挿絵が独特の世界を支えていて、大人向けの絵本としてもいけそうな気がします。
仲間の大切さを説いているのかと思いきや、最後の最後、ホリミナの一言で、違う、孤独を描いているのではないか、と思った。最終的に、一人で旅立ってゆかねばならないのだと。死へも、未来へも。希望にだって。それは、決して悲観することではなく、困難な試練でも越えなければならない壁でもなく、誰にでも訪れる自然な階段なのだと思いたい。
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