「奇譚を売る店」
また買ってしまったー。店を出たとき、かならずつぶやく独り言。古本屋には、きっとある。まだ見ぬ、自分だけには価値のわかる本が。魅入られたように読みふけり、このくだらない現実に、二度と戻って来たくなくなるような本が。
ミステリー関係の本などで、芦辺さんのお名前は見かけたことはあるものの、なかなか読む機会がありませんでした。図書館にもいろいろあったのですが、あらすじがおもしろそうだったので、この本を選びました。
また買ってしまった、という独白から始まる短編集です。主人公は、古本屋巡りを趣味とする作家。人物造詣が似ているので、同一人物なのかなあと思ったり、不穏な終わり方から違うのかなあと思ったり。ホラーテイストが強いです。
「帝都脳病院入院案内」一冊の古い病院のパンフレット。その病院に惹かれた主人公は病院をミニチュアで再現。ある日、そのミニチュアの中に人影を見かけた主人公は・・・。正直、話のオチは印象に残っておらず、ミニチュアを作るところで、なんで?と思ったほうが良く覚えている。
「這い寄る影」世にもつまらない小説を書く作者を追いかける主人公。最後には自分も三流小説家の呪いにとらわれていましたとさ。ブラックユーモアで、くすりとさせられる。
「青髯城殺人事件 映画化関係綴」映画シナリオ。昔と変わらない姿の女優。この女優が妖怪かと思いきや、実はただの孫娘。本当の妖怪は、すぐそばにいたのだ・・・!これは、一番こわいなあと思った。いや、もう、あの状況で対決なんてできないし、やられるしかないっしょ?
「時の劇場・前後篇」誰かに追われるようにして古本屋に入った主人公。そこで一冊の本を入手する。下巻は追っ手(?)に買われてしまい、上巻のみしか買うことができなかった。読み進めていくと、この本は自分の先祖の話のように思える。肝心の自分の部分は後篇へと続いているようだった。後篇をどうしても読みたい。読みたい・・・!続きを知りたい・・・!本読みのサガですね。
「奇譚を売る店」ある古本屋で手に入れた本。実は、この古本屋の店主が書いたものだった。最近頻発している作家の行方不明事件が、この店でつながる・・・。ありがちなひとひねり、と言えるかもしれません。しかし、怪奇的な雰囲気をまとったこの本をまとめる話としては良かったと思います。そうだよね、やっぱり別人だよねー、とすっきりしました。
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