「傍聞き」
巧妙な伏線に緊迫の展開、そして意外な真相。ラストには切なく温かな想いが待ち受ける。珠玉のミステリー短編集。
いい話で優等生的な本、という評判をネットで見かけた本。良くも悪くもわかりやすい話ではありました。
一応ミステリの体裁はとっているのですが、細かいディテールはともかく、大筋のオチが読めてしまいます。私にわかるくらいですので、世間の大半の方は途中の伏線で気付かれるでしょう。それだけ、読者に対して親切な伏線の張り方をしているとも考えられますが、オチも含めミステリ読みには物足りないんじゃないんでしょうか。
「迷い箱」元・受刑者の更正を目的として施設を作った主人公の女性。その施設から、1人の男が会社の寮へ移ることになった。前から自殺の兆候があった彼のことを彼女は心配するが、寮に越してから謎の行動をとることになる。謎っていうか、もうテレビしかありえないでしょ!悶々と悩み続ける所長。この人、本当にバカなんだろうか、と失礼ながら本の中の人を本気で心配した。
「899」消防士の主人公は、お隣のシングルマザーに好意を抱いている。ある日、お隣で火事が発生。現場へ駆けつけるが、自宅にいるはずの乳幼児がいない。その後、主人公が探したはずの部屋で子供がみつかった。あんなに探したのに、なぜ?虐待はいけないことですが、私刑も許されません。ましてや、人命救助を使命とする消防士が自己満足のために火事の現場で、数分とはいえわざと幼児を置き去りにするなど・・・。謎がどうこうより、モラルを疑った。
「傍聞き」主人公は、刑事であった夫を亡くした女性刑事。娘を女手ひとつで育てている。娘はケンカすると喋らなくなりハガキで物申すクセがあった。昔捕まえた犯罪者の報復を恐れる主人公。娘はハガキを送り続ける・・・。それには意味があった・・・のですが、詳しいところがさっぱり思い出せません!なんかの受賞作で高評価の作品ですが、印象に残りませんでした。ハガキ代もったいない・・・と思っただけかも。
「迷走」救急隊に勤める主人公の婚約者は、昔、事故に遭い今は車椅子での生活だ。彼女の父は彼の職場での上司にあたる。ある日、腹部を男に刺された患者から救急要請が入る。彼は、裁判で加害者の罪をもみ消した検察官だった。救急車のサイレンを利用して、居場所を突き止めるんだよねーと思っていたらそのまんまで吹いた。そのまんまやん!
トリックと物語、両方優れているミステリを書くのは本当に大変だと思います。せめて、物語として読ませる話であれば良かったのになあ。テーマに縛られすぎたのかな?好みもあると思いますが、あなたがこれからミステリを読むつもりであれば、オススメはできません。
PR