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読書の記録です。

「望郷」

湊かなえ/文芸春秋

島に生まれ育った人々が織りなす、心の奥底を揺さぶる連作短篇集。

直木賞候補になっていた作品。図書館で、借りる本としては新しめです。
読んでから気づいたのですが、雑誌「オール・スイリ」に掲載されていた短編も収録されていました。白綱島で幼少期を過ごした人々が、大人になってから当時を思い返すお話。舞台も白綱島です。
「夜行観覧車」で、かなりがっかりしたので、どんなもんだろうと思っていましたが・・・。これは、とても良かったと思います。作風も今までの湊さんとはちょっと違ってて新鮮でした。
「みかんの花」ミステリ色の強い話。すでに1回読んでたせいかもしれないけど、インパクトが無かった。
「海の星」こちらもミステリです。賞をとったようで・・・。おっさん、まだ生きてたんか!と私も思ったが、まあ死んでるよりは生きてる方がいいわな。
「夢の国」これも1回読んだものだった。含みのある終わり方ではあるけど、私はハッピーエンドで良いと思う。受け入れてしまえば、それなりに慣れていくものだと思うし。人生とは実はこんなもの、という気がする。主人公よりも、彼女の母親の方が不憫な感じ・・・。
「雲の糸」ミュージシャン、里帰り。後でどれだけフォローされても、許す理由にはならないと思う。お母さんのしたことも、同級生のしたことも。でも、お姉さんの最後の話は良かった。聞かなかったフリのあたりで、目がうるうるしました。
「石の十字架」島のいじめも都会のいじめと同じくらいひどいことをするんだな・・・と思った。うーん、まあ、これは普通のお話でした。
「光の航路」これが一番良かった。彼は生徒のために動ける先生になるに違いない。進水式の話は、親が子を思う気持ちがあふれていて感動しました。泣きそうだった。
全体的に、明るい話ではないし、なんかしこりの残る終わり方ではあるのですが、だからこそ少しの希望が美しく見えるのかもしれない、と思いました。


 
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