「玉磨き」
集落に伝わる伝統産業「玉磨き」の唯一の担い手である高橋家。通勤用観覧車の企画設計から設置運行までを請け負う只見通観株式会社。「古川姓」の人間の優秀さに牽引されているとされた、古川世代ブーム。不安や不調を呼び起こす「ガミ」を捕える「ガミ追い」の現場。ひたすら一人で部品だけを作り続け、完成形を見ることのない分業体制。水底に沈んだ町で、たった一人、商店街組合を守り続ける男。いつか失われ、忘れられる存在の「わたし」たち。それでも、それぞれの、ささやかな人生の日々は続く。失われるために記録される6つの仕事、6つの人生。
無意味の中にある意味・・・と思いながら読んでいた。
三崎さんの作品の中でも、現実にはない職業をモチーフにした本はおもしろかったので、これも期待して読みました。・・・が、残念でした!
私は全編を通して、一番最初のことを思っていたのだけど、逆に言うとそれぐらいしか感想が無かった、ということです。ルポライターの取材、という形のせいかもしれませんが、これはこうで、この話にはこういう教訓が含まれていて・・・。といちいち説明されているようで、色々と自分なりの思いを馳せる遊びの部分が無いのが残念でした。既存のルールを外れたおもしろい設定なのに、もったいないなあ・・・。
あと、他の物語とのリンクがあるのかな?と思う部分もありましたが、うーん、どうでもいっか、という感じ。シリーズとして定着した話(三崎さんの作品で言えば、コロヨシ!とか)のスピンオフならまだしも、何年も前の本とリンクしてても・・・。熱心なファンでもなければ、こうやって流しちゃうと思う。
私は自分の仕事が他の誰にでもできる仕事で、私はオンリーワンではないという自覚はあります。ありますが、さすがに無意味で生産性のない仕事だとは思っていません。しかし仮に、この短編の中での仕事のように、「それって何の役に立つの?何の意味もないならやめちゃえばいいじゃん」と他人が思うような仕事がこの世に存在したとして、彼らは何故その仕事を続けるのか。「無意味の中にある意味」とは何か。
それは「自己実現」もしくは「自己満足」だと思います。利益とか名誉とか、楽したいお金持ちになりたい、生活のために仕方なく、異性にもてたい・・・そういう欲とかをとっぱらって最後に残るのは、やっぱり「自分のため」かなと。
外野が何を言おうと関係ない。意味?社会への還元?そんなもん知るか!これが私の使命であり、これが私の人生なんだ!主人公たちは、そう言っているように感じました。
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