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読書の記録です。

「舟を編む」

三浦しをん/光文社


玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。

何年か前の本屋大賞1位だそうで・・・。なるほど納得のおもしろさでした。
少年時代に辞書の魅力にとりつかれ、辞書一筋の人生を歩んできた荒木。新しい辞書「大渡海」の編纂作業が始まったばかりだが、会社を定年退職することになった。そこで後継者として、玄武書房の営業部から馬締(まじめ)を引っ張ってくる。予想以上に辞書作りの才覚を備えていた馬締は、荒木の後を継ぎ、辞書編集部の面々とともに「大渡海」完成を目指し奮闘する・・・。
辞書作りのドキュメントをテレビで見たことがあって、すごく地道な作業だなーとびっくりした記憶があります。辞書に執筆者がいるのかー(今思えば当たり前だけど)とか、何回も手直しが加わっていつ完成するのかわからなくて気が遠くなりそう!とか・・・。こちらの本も、辞書がどのように作られているのか、わかりやすく説明されていて、ちょっと賢くなった気分になれます。紙のぬめり感なんて、考えたこともなかった。すいません・・・。
お話の主人公はまじめさんのですが、章ごとに視点が入れ替わって、辞書編集部の人たちの想いも語られていきます。まじめ&香具矢カップルも、微笑ましてくて好きですが、やはり西岡が良かったな!きっと西岡が好きな人っていっぱいいると思うんだけど。まじめさんって才能が抜き出てて、神のようなんですよね。だから私の仕事に関する感覚は普通の西岡に近いし、普段はお調子者の西岡が見せる葛藤、嫉妬、疎外感・・・それを乗り越えて、まじめを仲間だと認める男らしさがたまらん!さらには、対人スキルが低いまじめをフォローする細やかさ。軽薄そうに振舞っていても、仕事で押さえるポイントはしっかり押さえる。そんな西岡さんにやられました。笑。しかも、10年後には家庭を大切にする子煩悩になってるし・・・。いいなあ。
そうそう、本の厚さは薄いけど、この話は結構長い期間を描いてるんです。「大渡海」は、出版社の妨害などもありつつ、完成まで10年かかるのです。辞書の完成を待たず、亡くなってしまう先生。辞書を見せてあげられなかったことを悔やむまじめ・・・。辞書の完成は見れなかったけど、言葉に溢れた先生の生涯は、とても幸せだったんだなあ。最後は感動的でした。
情熱を傾けられる仕事と出会えることは、とても幸せなことだと思う。何を犠牲にすることになったとしても。だから、もし、あなたが今就いている仕事が愛してやまないものならば、決して手放さず大事にして欲しいと思う。
私も、そんな仕事に巡りあいたい。
ちなみに、映画版は観てません。観てませんが!香具矢さんは、宮崎あおいさんっていうのはどうなんすかね・・・。香具矢さんは本の中で「ちょっとそこらにいないような美人」と表現されています。あおいちゃん、好きな女優さんですが、ちょっとそこらにいないような美人となると、話は別っていうか・・・。美人ではないよねえ・・・。板前って感じでもないし。蛇足、失礼しました。


「だれかの情熱に、情熱で応えること。」


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